わかばひふ科クリニック(東京都武蔵野市吉祥寺東町)

武蔵野市・杉並区・練馬区他の赤ちゃんから子供、大人、老人まで幅広く診察をする皮膚科クリニックです。アトピーやあざを始め、水虫、とひび、湿疹などの相談・治療を行なっています。

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〒180-0002 東京都武蔵野市吉祥寺東町2丁目11-2 伊藤ビル1F

ブヨ

ブヨ刺され・結節性痒疹の治療法その2 薬以外の治療法を考える

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ブヨ刺され・結節性痒疹のお話その2は、薬以外の治療法についてです。

 

薬を塗ってもなかなか落ち着かないのが、結節性痒疹です。

そのような場合、補助的に治療法を組み合わせることがあります。

 

1)覆う

まずやってみるのが覆うこと。

当院ではパーミロールという透明な粘着剤入りのポリウレタンフィルムを使用しています。

簡単に言うと、皮膚にくっつくサランラップですね。

 

フィルムで覆うことのメリットはいくつかあります。

まず、薬の吸収が良いこと。

単に皮膚の表面に薬を塗っただけでは、薬が剥がれてしまいます。

これにフィルムで覆いをつけてあげると、剥がれる薬はなくなり、効果が強くなります。

もう一つのメリットは引っ掻いた時のダメージが小さいことです。

摩擦の小さなフィルムが表面を覆っていることで、引っ掻いた時に

直接皮膚に刺激が行かなくなります。また、皮膚の細胞がむしり取られることはなくなります。

つまり、血液が出ることもなく、血小板からの炎症を悪化させる成分も出なくなります。

 

逆にデメリットもいくつかあります。

まず、感染が起きやすくなること。

また、塗すぐりの副作用もできやすくなります。

もう一つ、蒸れてふやけてしまうこともあります。

これについては、当院では最も蒸れにくいフィルムを使っているので、問題にはなりませんでした。

〔日東メディカル〕優肌パーミロール(ハンディロールタイプ) 10cm×10m×1巻 品番:H24R10

 

上は当院で使っているフィルム材です。いくつかの製品を試しましたが、

もっとも優れていると思います。

残念ながらAmazonでは10mのものしかありませんが、

当院では2mの長さの製品を扱っています。使い勝手は2mの製品の方がいいみたいです。

受付に申し付け下さい。

 

2)液体窒素

液体窒素で結節性痒疹の部分を焼いてしまうこともあります。

これも何故効くのかよくわかっていません。

一説には皮膚の下まで伸びた異常な神経を焼いているからということも有るようです。

当院では痛くないような方法で治療することもあります。

 

3)紫外線

これも一般的な治療法です。

ナローバンドUVBやエキシマレーザーと言った治療法もこの分野の治療法になります。

が、当院ではこの治療はしていません。

機械がないんです・・・

というのも一つですが、小さな子の場合、若いうちに紫外線で治療をした時に、

その後、皮膚の腫瘍が出来ないのかがはっきりしていないというのも心配な点ですので、

今は治療は行わずに詳しい情報が集まるのを待っている段階です。

 

結節性痒疹はさまざまな治療法を駆使しないとなかなか落ち着かない治療法です。

当院ではこのような治療法を組み合わせて行っています。

これでも、夏は現状維持でよしと考えています。

これから涼しい季節になりますが、これからが治療の本番です。

頑張りましょう。

 

 

ブヨ刺され・結節性痒疹の治療法その1 まずは薬をしっかりと塗りましょう

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さて、昨日のお話でブヨ刺され・結節性痒疹のお話をしました。

本日はその治療のお話を進めていきましょう。

 

結節性痒疹の特徴は非常に炎症が強いことです。

それに伴い、痒みも非常に強いものがあります。

ですので治療法もその強い炎症に合わせて行う必要があります。

 

1)ステロイドの塗り薬

治療の最初はステロイドの塗り薬です。

薬の選択ですが、小さな子にも、非常に強いものを使うことがあります

というか、使わざるを得ないのです。(ステロイド外用薬の強さ

まずはしっかりと痒みと炎症を取ることが大事です。

時には多毛などの副作用が出ることがありますが、

ある程度の副作用は出ることを承知の上で使うこともあります。

なお、副作用は塗るのをお休みすると落ち着いてきますので、

早く治すことはすれだけトラブルの可能性を減らすことにもなるのです。

 

2)プロトピック軟膏

プロトピック軟膏とは、ステロイドと違う成分の、炎症を抑える薬です。

一般にはアトピー性皮膚炎に使われますが、それ以外のさまざまな皮膚の病気にも使われています。

副作用は、塗り始めの1,2週間にひりひり感や火照る感じがするくらいです。

また、ステロイドの塗り薬と違って、長期使用に伴う副作用が少ないことが特徴です。

(もちろん、免疫を抑える薬ですので、真菌やウイルス、細菌による感染症を起こしやすくなりますが)

効果はステロイドに比べ、痒みを抑える傾向が強いです。

(一般的に湿疹の部分には皮膚直下まで神経が伸び、痒みに敏感になっているのですが、

プロトピックはその伸びた神経を縮める作用があるようです。)

そのために、プロトピックとステロイドの塗り薬を併用することもあります。

 

3)ステロイド内服

本当に症状が強い時に短期間に限り飲んでもらうことがあります。

当院では使って2週間程度です。

少量を長期飲むという選択もありますが、

小さい子の場合、将来成長に問題が起きる可能性があるので、当院では行っておりません。

 

4)抗ヒスタミン剤内服

いわゆる一般的な痒み止めの薬も飲んでもらうことがあります。

時に眠くなるので、要注意。

 

 

当院で治療に使う薬は上記にあげた薬で、一般的なものです。

あとは、使い方ですが、

乾燥肌がある子にはまず、全身に保湿剤をしっかりと塗ってもらいます。

意外にこれを忘れると乾燥により引っ掻いてしまうことが有るのです。

同時に結節性痒疹の部分を引っ掻いてしまい、落ち着かなくなる原因にもなります。

その後、結節性痒疹の場所にステロイド(+プロトピック)を塗ってもらいます。

 

この時の注意。

ひとつ、少し広い範囲に塗ること

ふたつ、少しでもしこりやかさかさを感じたらためらわないこと

みっつ、ほてった時には塗らないこと

よっつ、こすったり、擦り込んだりしないこと

結構大事なことですよ。

 

あとは、忘れていけないかさぶたのケア。

私はかさぶたにも薬を塗るようにお話をしています。

かさぶたの部分からの薬の吸収についてはわかっていないことも多いのですが、

少なくともかさぶたが痒くなることは防げるようです。

ですので、しっかりと塗ることにより、かさぶたをむしらずに自然に落ちるのを待つことが出来るのです。

 

まずは薬をしっかりと使うこと。

次はそれでも治療が難しい場合のお話です。

ブヨに刺されるとなかなか治らないのはなぜか?

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台風の季節となりました。当院は台風が直撃しない限りは診察しています。

また、雨の日は患者さんの数は少なめです。

ゆっくりと話しをしたいかたにはお勧めですが、小さい子はあまり外出すべきではないですよね

 

毎日、虫さされを診察していますが、数ある虫さされの中でも、ブヨに刺されたと話を聞いた時が一番緊張します。

これはなぜか?

実はよくわかっていません。

理由の一つは、ブヨは「刺す」のではなく「噛みちぎっている」からと言われています。

その分、皮膚表面のダメージが大きく、症状が激しくなるのではないかともされています。

もうひとつは出血です。といっても、血液の赤血球ではなく、問題は血小板。

あかくない「つゆ」がたらりとたれると、その血小板の中から炎症を悪化させる成分が出ると言われています。

そのために、ブヨに刺された傷が治りにくいとされています。

 

あとは、かさぶたの問題もあります。

このかさぶたも実は曲者。

特に小さな子はかさぶたを掻き壊してしまうのです。

すると、皮膚がえぐれ、より深い傷ができ、かさぶたになってしまう。

すると、また掻き壊してしまう・・・

この繰り返しで、深い潰瘍をつくってしまい、治った後が傷跡になってしまいます。

当然、先の血小板の問題も出てきます。

 

本当にひどいブヨの刺し傷は最終的には「結節性痒疹」になってしまいます。

この結節性痒疹は数年も続くことがあります。

この治療には手を焼くことがあります。

当院では、いくつかの方法を組み合わせて治療を行っていますので、

その治療法についてお話をしていきましょう。

 

いつまでも治らない虫さされ あるいは ブヨに注意

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ブヨ。

皮膚科医に取っては嫌な言葉です。

だって、刺されると手こずるんですよ。しかも治らないんだもの。

 

なぜ、ブヨに噛まれると症状が長引くのか?

実は完全にはわからないのです。

ただひとつ言えるのはブヨは皮膚を「刺す」のではなく皮膚を「噛みちぎる」から。

そのために悪化する可能性があります。

 

ブヨの刺し傷の特徴は今述べたように噛みちぎること。かゆみが強いこと。

そのために皮膚の反応は他の虫さされと異なる様子を見せます。

 

まず、皮膚は一部なくなりますので、それをなおすためにかさぶたを作ります。

また、なくなった部分から血液や組織液(いわゆる「つゆ」)が出てきます。

実は組織液や血液の中には痒みを強く感じさせる成分が含まれていることがわかっています。

また、かさぶたも一般的に痒みを感じることがありますよね。

そのためかもしれませんが、皮膚の下のかゆみを感じる神経が「過敏」になっているようです。

 

そのせいで、ブヨに刺されるととてもかゆくなってしまいます。

結果として皮膚は刺されたところを中心に固く盛り上がってしまい、

治療を続けても全然良くならなくなってしまうのです。

これを「結節性痒疹(けっせつせいようしん)」と呼んでいます。

 

ここまで進んでしまうと、治療は大変です。

ステロイドの塗り薬を数ヶ月ずっと塗る必要があります。

副作用が出て、毛が生えてくることもありますが、やむを得ません。

(治療をやめれば毛は抜けるので心配しないで下さい)

でも、治療をしないと、数年間も持続してしまいますから、仕方が無いのです。

 

以上、ブヨに刺された時にいかに大変かお話しましたが、

同じようなことはずーっと引っ掻かれた皮膚ではすべて起こりうることなのです。

なので、引っかかないことが大事なのです。

引っかかないほうが早く虫さされは治りますよ。