わかばひふ科クリニック(東京都武蔵野市吉祥寺東町)

武蔵野市・杉並区・練馬区他の赤ちゃんから子供、大人、老人まで幅広く診察をする皮膚科クリニックです。アトピーやあざを始め、水虫、とひび、湿疹などの相談・治療を行なっています。

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市販薬

やけどの初期治療に冷却ジェルシートは推奨しません

というお話です。

たまに使われている方がいるのですよ。

 

動画で確認したい方はこちら。

 

 

 

やけどで受診された方にはどのような初期対応をしていたのかを外来で確認しているのですが、

ほとんどの方は氷で冷やしているのです。しかし、冷却ジェルシートを目にしたりして…

 

まず大前提として冷却ジェルシートは皮膚のトラブルが有るところには使ってはいけません

メーカーにより記載は少し異なりますが、

ライオンの冷え◯タ

小林製薬の熱◯まシート

の記載事項です。

どちらのメーカーもやけどには使えませんと明記していますね。

ということでメーカーも非推奨だったりします。

 

あとは実際に使ったときにはどうなのかという問題があります。

それぞれ見ていきましょう。

比較対象は一般的な保冷剤、つまり氷です。

 

1)熱を取る力は強いのか?

まずは最も大事なこの点についてです。

そもそもやけどというのは熱により皮膚のタンパク質が変性し、

壊れてしまうために生じるわけですから、

どのくらいの熱量を取ることができるのかが大事になります。

でも…資料がない

冷却ジェルシート全般についての資料は見当たらないのです。

小林製薬はこのように書いていますが。

ただし、気をつけるべきは実際にそのようなデータの詳細です。

どのような使い方をしたのか、どのように測定したのか。

有効成分の入っていない冷却ジェルシートとの比較はどうだったのか。

こちらについての資料が一切見られません。

あとは氷と比較してどうなのか?も不明です。

同量の氷と比較してどうなのか?わからないとしか言えないのです。

つまり、冷却ジェルシートの温度低下作用が氷より高いとは言いにくいようですね。

なお、解熱作用についてもないとする報告があるようです。参考までに。

 

2)皮膚が一緒に剥がれてしまう可能性

ジェルシートというだけ有り、皮膚との接触部分にジェルがあり、

皮膚に密着するようになっています。

つまり剥がすときには一緒に皮膚を持って行ってしまう可能性があります。

特にやけどは症状は強くなると水ぶくれを作ります。

つまり、シートを剥がすときに水ぶくれを剥いてしまう可能性があるのですよね。

これは皮膚科医に取っては嬉しい状況では有りません。

やけどの水疱を剥がすことによるデメリットもあるからです。

・水疱のお水の中には傷を早く治す成分が入っている

・剥けた面が露出するのでこすれや痛みの刺激が強く出てしまう

・剥けた面に二次感染を起こす確率が出てくる

と良いことなしです。

氷を当てるだけの場合は上記のリスクは当然有りません。

 

3)成分にかぶれるリスク

冷却ジェルシートのジェルを作るには色々な成分を必要とします。

理論的にはその成分のどれに対してもアレルギーを起こし、かぶれるリスクはあります。

もちろんその可能性は高いものではないのですが、ここで注意したいのは

やけどの部位に使うということ。

皮膚に異常があるところにある物質を接触させたとき、

その成分に対してアレルギーを起こす確率は正常な皮膚に接触するよりも高くなる

ことがわかっているのです。

つまりやけどの皮膚に対しても同様のことが起こる可能性がある。

氷つまり水でかぶれる可能性はないので、これについては

冷却ジェルシートのみに存在するリスクとなります。

 

まとめましょう

1)熱を取る力

優劣不明だが氷のほうがよさそう(私見)

2)皮膚を剥がす可能性

冷却ジェルシートのみ

3)かぶれるリスク

冷却ジェルシートのみ

となります。

このように考えると、やけどの部分に対してあえて冷却ジェルシートを使う理由は

ないですよねえ…

 

 

 

すべてのクスリはリスクである。

以前聞いた話です。

或る先生が患者さんの診察をしてひとこと、薬は必要ありませんと言いました。

その患者さんはどうしてもクスリが欲しくて、先生に聞きました。「先生、薬を出してもらえませんか?」

その先生、薬がいらない理由を話して、最後に一言。

「クスリは逆から読むとリスクになります。すべてのクスリはリスクなのです」

今回の話を読んだ後、クスリと笑ってくれるといいのですが。

 

 

さて、医療機関には毎月医薬品安全情報という冊子が届きます。

ここ数週間の医薬品の説明書の改訂がすべて記載されているものです。

私達はその説明書を見ながら、副作用を把握するのですが、

最近多く見られるのが、「スティーブンス・ジョンソン症候群」と「中毒性皮膚壊死」の副作用追加です。

あの薬にもこの薬にも追加されています。

 

この2つの病気は薬のアレルギーにより起こされる症状です。

皮膚が死んでしまうのです。時には命を落とすころも有る怖い疾患です。

皮膚に出る病気ですので、ほとんど皮膚科で治療する病気なのですが、

重症で、数週間の入院が必要になり、時にはICUに入ることも有る病気です。

この症状は極端なことを言えば、どんな薬でも出る可能性があります。

(自分を構成しているタンパク質に対しては本来起きることのない反応ですが、

薬の主剤以外の添加剤でも起こる可能性はあるのです)

 

結構多いものは市販の風邪薬。多分飲む人が多いのでしょう。

当然、病院で処方された薬で発生することもあります。

極端な話、どんな薬でも出ます。

 

これら薬剤アレルギーを診察治療している中で一番やるせないのが、

「念の為に出しておきましょうね」の薬にアレルギー反応を起こしてしまった場合です。

「念の為に」の結果、数週間の入院と、時には一生続く後遺症に苦しめられるのです。

治療をしていて、気の毒になってしまいます。

また、売る側の問題も有るだろうと思わせることもありました。(これはまた今度。)

 

一つ覚えていて欲しいことは、どんな薬にも非常に低い確率でこのようなアレルギーは起こりうるということです。

クスリはリスクとなるのです。

 

なので、当院では必要最低限の飲み薬を出すようにしています。

必要以上に沢山の薬を処方する先生を見るたびに「無茶しやがって・・・」と思うのは、職業病なのでしょう。

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