わかばひふ科クリニック(東京都武蔵野市吉祥寺東町)

武蔵野市・杉並区・練馬区他の赤ちゃんから子供、大人、老人まで幅広く診察をする皮膚科クリニックです。アトピーやあざを始め、水虫、とひび、湿疹などの相談・治療を行なっています。

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JAK阻害薬

アトピー性皮膚炎全身療法の年齢制限のまとめ(2022年12月)

2022年12月より、サイバインコの投与制限が解除になります。

今までは新薬ということもあり、2週間の処方制限がありました。

しかし販売開始から1年が経過したとのことで処方制限が解除になります。

当院でも4週間を限度に処方を行うことになります。

(その他のアトピー性皮膚炎内服薬も4週を限度に処方しています)

何度も処方のために病院に通ってもらうのも大変ですからねえ…

 

それに伴い、当院の全身療法もまた一つ武器が増えることになりました。

今回はその治療法を年齢制限という面から確認したいと思います。

 

12歳以上

・リンヴォック 15mg(通常量)

・サイバインコ 100mg(通常量)、200mg(倍量) ←New!

 

13歳以上

・ミチーガ皮下注

 

15歳以上

・デュピクセント皮下注

・オルミエント 4mg(通常量)

・リンヴォック 30mg(倍量)

 

となります。

今回の変更に伴い、12歳から常用量で内服しても効果の出ないアトピー性皮膚炎の患者さんには早い段階から倍量投与が可能になりました。

今までは15歳からでしたので治療の幅が一段と広がったものと考えています。

 

上手に薬を選んでアトピー性皮膚炎をしっかりと抑えていきましょう

新しい乾癬の薬「ソーティクツ」についてのお話(2022年10月)

今回は新薬のお話です。

といってもまだ販売開始前なので、事前情報レベルですが興味のある方もいるかと思いますので、

簡単に説明をしていきましょう。

 

治療対象疾患は尋常性乾癬および膿疱性・紅斑性乾癬など。

TYK阻害薬と言われますが、大きくはJAK/STAT系の阻害薬と考えて良いでしょう。

すでにJAK阻害薬は皮膚科ではアトピー性皮膚炎、それ以外の科では関節リウマチなどに

使用されていますが、今回は皮膚科の乾癬領域の新薬となります。

 

大雑把な考え方として炎症を起こし進めるには最棒の中から炎症を司る物質が

放出されるわけですが、その放出信号を伝える一つの経路にJAK/STAT系というのがあります。

今回はその一部を抑えることにより、乾癬の症状の悪化を抑えるという考え方になります。

全部を抑えると色々と困ったことになるので、一部だけということですね。

その一部に何があるのかでどんな炎症を抑えるのかが決まってくるのでそこが薬の

作り方のキモになるわけです。

 

効果についてはかなり高いような印象を受けます。

現在当院でも処方されているアプレミラストとの比較試験を行っているのですが、

かなり良好な差が出ているようです。

特にアプレミラストがあまり効果出なかった方でも有効であるというのは

かなり嬉しい結果です。

 

しかし問題もあります。

まずはお値段。まだ出ていませんが、アトピー性皮膚炎などのJAK阻害薬を考えると

アプレミラストよりもお高いでしょうねえ・・・

JAK阻害薬系ということもあり、仕方が無いのですが、感染に対しても弱くなります。

同様に体内にすでに感染が成立している肝炎や結核についてはこの薬を飲むと一気に

症状が出て悪くなる可能性があるので、事前の検査が必要になるかと思われます。

また、今後色々と制限事項が出てくるかもしれません。

あ、あとは新薬なので処方はしばらく2週間分しか出せません。

頻繁に通院する必要があるのはデメリットでしょうね・・・

 

しかし、乾癬に有効な新世代の飲み薬がアプレミラストしか無い中で

次の選択肢が出てくることは望ましいことかと思います。

アプレミラストですが、いろいろな理由で内服を継続できない人もいますし、

飲んでいてもなかなか症状が収まらない人もいます。

そのような方にとっては一つの選択肢となるのでしょうね。

期待したいところです。

あとはお値段ですね。お高いんでしょう・・・?ふう・・・

 

JAK阻害薬内服のための事前検査を当院で施行することにいたしました

現在、アトピー性皮膚炎・円形脱毛症に対して使用が可能なJAK阻害薬。

非常に効果の高い治療法ではあるのですが、事前検査が必要になります。

貧血や肝機能などの検査の他にも、免疫抑制効果があるために肝炎・結核の

否定を行うための事前検査を行わなければいけませんでした。

 

今までは近くの小児科・内科の先生にお願いしていたのですが、

採血時に色々と問題になることがありました。

そのために今後は当院で基本的な採血はすべて実施し、

胸部レントゲン撮影による結核の否定のみは近くの内科の先生にお願いをする。

という手順に変更となります。

 

内科受診の手間はという面では以前と変わりないのですが、

当院内での情報の集積および内服可否の判断はより早く行うことができます。

 

しっかりと事前検査を行ってリスクを減らしていきながら

きちんと効果のあつ治療法を進めていきたいと考えています。

円形脱毛症の飲み薬を実際に始めてみてのお話

今回は6月に少しだけお話をした円形脱毛症の飲み薬についての続編になります。

 

現在円形脱毛症の方でJAK阻害薬の内服を開始している方が数名おられます。

またアトピー性皮膚炎に円形脱毛症を合併したたために、アトピーの治療薬としてJAK阻害薬を内服している方も数名おられます。

今回はその経過についてのお話です。

 

現在日本では円形脱毛症に対してオルミエントというJAK阻害薬の内服が認められています。

ただし、内服を開始するためには条件があり、

・頭部の面積の50%以上に円形脱毛症があること

・半年以上の脱毛期間があること

をそれぞれ満たす必要があります。

つまり重症の円形脱毛症の方であることが前提条件となっております。

 

また、アトピー性皮膚炎についてもオルミエントは内服可能であり、

そして円形脱毛症を合併することはアトピー性皮膚炎では稀ではありません。

つまりアトピー性皮膚炎治療中の患者さんに円形脱毛症が合併する場合、

オルミエントを飲んで一緒に円形脱毛症の治療を行うことも可能ではあります。

こちらはアトピーのために飲んでいるので、円形脱毛症の面積や脱毛期間は関係ありません。

 

以上の2つのパターンの円形脱毛症の患者さんがJAK阻害薬を飲んでいるのですが、

やはり前者に比べて後者の発毛状況の方が良いようです。

本当にどんどん生えてくるというのは正直な印象ですね。

あっという間に消えてなくなってしまう患者さんが多い印象をうけます。

円形脱毛症がなくなって、アトピーの治療を別の薬剤に変更したくても

同意してくれないくらいの満足度があります。

 

逆に新規適応内服開始となった円形脱毛症については長期戦の覚悟が必要なようです。

どんどん生えてくるという印象はあまりなく、そろりそろりと出てくる印象ですね。

数週間をかけて少しずつ生えてくるという印象を受けます。

 

こちらについては薬剤内服前から長期戦の覚悟を持って治療を始める必要がありそうです。

説明書にも、内服開始後36週間程度は継続して様子を見ることとありますが、

まさにその通り、変化が目に見えるようになるまでには時間がかかりそうです。

そこをいかにして治療意欲を保ち続けるかというところがポイントになりそうです。

 

ゆっくりじっくりと治療を進めていく必要がありそうです。

あとはより早い時期から、より面積の小さい時期から治療を開始できるようになるといいのですが。