わかばひふ科クリニック(東京都武蔵野市吉祥寺東町)

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新型コロナウイルス感染症と皮膚科領域の変化について考える。その1 顔の皮膚病編

新型コロナウイルス感染症と皮膚科領域の変化について考える。その1 顔の皮膚病編

2020年に入ってから、望むと望まざるとに関わらず新型コロナウイルスの影響を

社会は受けてきました。

皮膚科領域についても全く同様です。

とにかくいろいろなことが変わってきたというのが正直なところです。

今回まとまった時間が取れたので、その変化について考えてみたいと思います。

特に、どのような病気が増え、減り、あたらに出現したのかについて考えてみます。

 

この半年間の大きな変化というのは、とにかくマスクの時間が増えたこと、消毒の回数が増えたことの

2点があるでしょう。

今回はまずマスクの話をしていこうかと思います。

 

マスクをこんなに長時間使用することになったのは、人類史上初めてと言ってもいいかもしれません。

マスクは皮膚に密着します、従って皮膚はマスクの影響を受けることも当然でしょう。

その影響とは簡単にまとめると、「こすれること」と「蒸れること」の2点です。

一つ一つ説明をしていきましょう。

 

 

まず「こすれること」の弊害です。

マスクは皮膚に密着します。しかし完全にはくっついてはいません。

ノーズワイヤーをしている場合は比較的少ないのですが、

顔面とマスクは動けば動くほどずれます。それにより皮膚がこすれることになります。

そのために皮膚がこすれる刺激に耐えられなくなってしまい、

いわゆる”皮膚が負けた状態”になってしまうのです。

 

皮膚が負けてしまうとまずその部分に赤みが出てきます。

そしてザラつきが出てきます。

更に悪化すると、皮膚が剥けてしまい、浸出液が出るようになります。

いずれも湿疹の変化と言えるでしょう。

 

よくできる部分は鼻の甲、頬骨の上、顎の下のライン、耳の後ろです。

それぞれマスク本体、耳あての部分がこすれることで出現します。

年齢が比較的小さい子と高齢者に多くみられます。

これには理由がありまして、この2者は他の年齢に比べて相対的に皮膚が弱いこと、

皮膚を守るための皮脂が少ないことという共通する要因があります。

なお、耳の後ろはもともと皮脂が多く出ませんので、成人でも結構な頻度で症状が出るようです。

マスクの種類はあまり関係ないようですが、自家製もしくは市販の布マスクをしている人が

多いようです。特に鼻の頭、頬骨の部分にその傾向が強いです。

先ほどお話したノーズワイヤーの有無に伴う擦れの影響が強いのでしょう。

治療については炎症の強い部分にはステロイドの外用剤+保湿剤、

弱い部分には保湿剤の使用を行います。

また、マスクの動きが激しいと思われる方については、ノーズワイヤー付きのマスクを推奨します。

あとはマスクをしない時間を増やしていくべきでしょうね。

 

 

 

次に「蒸れること」の弊害についてです。こちらは更に「二次感染」という問題も出てきます。

詳しく見ていきましょう。

 

蒸れること自体の皮膚に対する影響も当然ながら見られます。

蒸れることで皮膚表面の水分量が必要以上に多くなります。

そのために細胞が水分をすいすぎてしまい、逆に皮膚バリア機能が落ちてしまう可能性があります。

 

また、蒸れる=皮膚表面の湿度が増えることにより、皮膚表面に住んでいる微生物の異常増殖

及びバランスの崩壊により、感染性疾患が増加することが見られます。

具体的には、アクネ菌の増殖によるニキビの悪化。黄色ブドウ球菌や表皮ブドウ球菌の増殖による

毛包感染症の出現。マラセチアという皮膚常在真菌の増殖による脂漏性湿疹やマラセチア毛包炎の

悪化、カンジダ(真菌)の増殖による口角炎など、明らかに受診者が増えた病気もありました。

例年との違いはいずれもマスク内に特に症状が強く出ることにあります。

ニキビはそもそもが個人差の多い疾患ですので、おでこに多い人、ほっぺたに多い人、

下顎に多い人ととバリエーションは多かったのですが、今年に限っては

ほっぺた、下顎のニキビの目立つ方が非常に多いのが特徴です。

毛包感染症は鼻の頭によくできます。

こちらは蒸れだけではなく擦れも影響しているかもしれませんが、非常に硬いしこりになり、

治るまでに1ヶ月近くの時間がかかることが特徴です。

この病気も明らかに今年増えました。

マラセチアも分布はニキビ同様です。別名大人ニキビというくらいのニキビっぷりですので、

区別は難しいのですが、こちらもニキビ同様に増えた印象があります。

カンジダは口の横が切れる形での症状ができます。体調が悪いと出ることも多いのですが、

今年はピンピンしている人でも多く出現しているように見えます。

治療は増殖している病原微生物に対し、

抗生剤や抗真菌剤を症状に合わせて使用してくことになりますが、

やっぱりなかなか治ってはくれないです。治療に対する反応も悪いのがマスクの悪影响なのでしょう。

 

 

ここまで、「すれること」と「蒸れること」により発生するマスク下の病気についておはなしを

していきました。

マスクをしない生活というのは当分の間考えられませんので、

上手に付き合っていく必要があるでしょうね。

 

現状で考えられる対応としては

・マスクをしない時間を増やすこと。

・マスクを清潔に保つこと。

などがあるでしょうね。

 

誰も居ない道を歩くのにマスクはしなくてもいいんじゃないの?

家に帰ったときに手だけではなく顔も洗って流してもいいんじゃないの?

布マスクであれば、帰ったらすぐに選択をして、雑菌を減らしてもいいんじゃないの?

汗もとれるんじゃないの?

といくつか簡単な対策を取ることができます。

 

新しい生活には新しい生活習慣を作り上げていく必要があるのかもしれませんね。

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