わかばひふ科クリニック(東京都武蔵野市吉祥寺東町)

武蔵野市・杉並区・練馬区他の赤ちゃんから子供、大人、老人まで幅広く診察をする皮膚科クリニックです。アトピーやあざを始め、水虫、とひび、湿疹などの相談・治療を行なっています。

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スティーブンス・ジョンソン症候群

お薬手帳の是非を考えてみる 皮膚科医の立場から

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最近、ネット界隈ではお薬手帳の有無について何かと話題になっているようです。

確かに手帳をもらわないと少し値段は安くなるのは事実ですが、

それでよいのか?を皮膚科医の立場で考えてみました。

 

「なんだい、皮膚科医なんて塗り薬しか出していないじゃん」

と言われますが、それはそのとおりです。

特に私はあまり出さない方ですので、何種類も飲み薬を飲んでいる患者さんは数えるほどしかいません。

 

では、なぜ皮膚科と飲み薬に関係があるのか?

それは薬剤アレルギーの話です。

皮膚にも薬剤でアレルギー反応が起きることがあります。

「薬疹」と皮膚科医が呼ぶ病気です。

つまり、体の中に入った薬の成分に対してアレルギー反応が起きるわけですね。

 

この薬疹ですが、本当にピンキリです。

薬をやめたら数日ですぐに引いてしまうものがほとんどですが、

(アレルギーの原因となる薬をやめるのが唯一の治療です)

重症になると本当に命に関わる病気も中にはあるのです。

スティーブンス・ジョンソン症候群や中毒性表皮壊死症、薬剤性過敏症症候群といったものがあります。

 

この診断は唯一つ。

原因となる薬剤を突き止めることです。

ここで必要になるのが内服歴あるいは服用歴と言われるものです。

 

実はこの内服歴を確認するのがとても大変なのです。

何を飲んでいるのか?

それを調べるために数日必要となることも往々にしてあります。

(皆さん、現在飲んでいる薬の名前を全種類、ソラで言えますか?)

 

ここで活躍するのがお薬手帳です。

この手帳がひとつ有るだけで数日かかるものが10分で済んでしまうのです。

 

この違いは大きいですよ。

治療方針を立てるのが、格段に楽になります。

治療開始も早く出来る。

時には失われる命を救うことが出来るかもしれません。

 

たかが手帳、されど手帳です。

薬局の数十円節約するメリットとトラブルになった時の対処が変わるメリット。

そちらを取りますか?

すべてのクスリはリスクである。

以前聞いた話です。

或る先生が患者さんの診察をしてひとこと、薬は必要ありませんと言いました。

その患者さんはどうしてもクスリが欲しくて、先生に聞きました。「先生、薬を出してもらえませんか?」

その先生、薬がいらない理由を話して、最後に一言。

「クスリは逆から読むとリスクになります。すべてのクスリはリスクなのです」

今回の話を読んだ後、クスリと笑ってくれるといいのですが。

 

 

さて、医療機関には毎月医薬品安全情報という冊子が届きます。

ここ数週間の医薬品の説明書の改訂がすべて記載されているものです。

私達はその説明書を見ながら、副作用を把握するのですが、

最近多く見られるのが、「スティーブンス・ジョンソン症候群」と「中毒性皮膚壊死」の副作用追加です。

あの薬にもこの薬にも追加されています。

 

この2つの病気は薬のアレルギーにより起こされる症状です。

皮膚が死んでしまうのです。時には命を落とすころも有る怖い疾患です。

皮膚に出る病気ですので、ほとんど皮膚科で治療する病気なのですが、

重症で、数週間の入院が必要になり、時にはICUに入ることも有る病気です。

この症状は極端なことを言えば、どんな薬でも出る可能性があります。

(自分を構成しているタンパク質に対しては本来起きることのない反応ですが、

薬の主剤以外の添加剤でも起こる可能性はあるのです)

 

結構多いものは市販の風邪薬。多分飲む人が多いのでしょう。

当然、病院で処方された薬で発生することもあります。

極端な話、どんな薬でも出ます。

 

これら薬剤アレルギーを診察治療している中で一番やるせないのが、

「念の為に出しておきましょうね」の薬にアレルギー反応を起こしてしまった場合です。

「念の為に」の結果、数週間の入院と、時には一生続く後遺症に苦しめられるのです。

治療をしていて、気の毒になってしまいます。

また、売る側の問題も有るだろうと思わせることもありました。(これはまた今度。)

 

一つ覚えていて欲しいことは、どんな薬にも非常に低い確率でこのようなアレルギーは起こりうるということです。

クスリはリスクとなるのです。

 

なので、当院では必要最低限の飲み薬を出すようにしています。

必要以上に沢山の薬を処方する先生を見るたびに「無茶しやがって・・・」と思うのは、職業病なのでしょう。

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