わかばひふ科クリニック(東京都武蔵野市吉祥寺東町)

武蔵野市・杉並区・練馬区他の赤ちゃんから子供、大人、老人まで幅広く診察をする皮膚科クリニックです。アトピーやあざを始め、水虫、とひび、湿疹などの相談・治療を行なっています。

TEL050-3355-9592


〒180-0002 東京都武蔵野市吉祥寺東町2丁目11-2 伊藤ビル1F

薬の話

顔にベリーストロングのステロイド外用薬

いやあ、絶対に塗ってはいけないでしょう。

少なくとも、自分は副作用を考えるとなかなか塗ってとは言いがたいものがあります。

もしも、塗って貰う場合には必ず頻繁に受診するように強く説明を行います。

子供には絶対に使いませんよ。使う必要もありませんし。

 

2014年3月11日付けで国民生活センターからのプレスリリースが出ていました。(リンク

横浜市の開業医が「漢方薬」の塗り薬を称して処方されている商品の中に

ストロンゲストという、最も薬の効果の強いステロイドの塗り薬が、配合されていたというお話です。

デルモベートという塗り薬ですが、この薬はあまり処方することはありません。

開業してそろそろ1年になりますが、処方したのはほんの数回といったところでしょうか。

特にアトピー性皮膚炎には処方したことは当院では無いと思います。

 

そもそも、治療の強さと治療期間には関係があります。

強い薬であれば、それだけ短い期間にする必要があります。

逆に弱い薬であれば比較的長期間塗っても問題はありません。

アトピー性皮膚炎のような長期間の外用では、強い薬は副作用の観点からはお勧め出来るものではないのです。

デルモベートのような強い薬剤はひどい湿疹や虫さされといった短期的に使用すべき病変に対して使用するものです。

 

また、薬を塗る場所も問題です。

特に顔面の皮膚は体に比べて非常に薄いものです。

塗り薬はよく効くのですが、逆に副作用が出やすいものでもあります。

その分取り扱いに注意すべきものです。

 

では、湿疹を抑えたいときにはどうすればよいのか?

まず、ステロイド以外の塗り薬があります。

プロトピックという薬がそうです。しみるなど、クセの有る塗り薬ですが、

特に顔では痒みや赤みをしっかりと取ってくれます。

また、内服であればシクロスポリンという飲み薬もあります。

頻繁に採血が必要であること、併用薬に注意すること、薬代が比較的高いことなどが

問題になりますが、(グレープフルーツジュースがダメなんですよね)

効果は非常に高いものがあります。

また、保湿剤をしっかりと使うことも大事ですし、

場合によっては紫外線を当てることで症状を押さえ込むことも可能です。

 

必要があれば短期の入院で一気に症状を改善させることも可能です。

また。大事なのはスキンケア。

毎日の生活の中でいかに湿疹を抑えるべきかを考える必要があります。

 

つまり、湿疹の治療は「ただ単に薬を塗っていれば良い」というものではありません。

飲み薬についてもただ飲んでいればよいというものではないのです。

毎日の生活の中でケアをしっかりと丁寧に行っていくことが

治療の一番の近道です。

 

塗り薬をポンと処方してそれで診察終了。

質問すると露骨に嫌な顔をする

という医師も未だにいますが、私はそれが良くないものと考えます。

 

しっかりと説明をしてくれる、薬を飲む/塗る意外についても説明をしてくれる。

そういった先生と長くお付き合いをしていきたいものです。

ネオメドロールEE軟膏は嫌いです

今回も目の周りに塗る軟膏のお話です。

 

いくつか、目の周りの湿疹に対して使われる眼軟膏というものがあります。

今回はその中でもネオメドロールEEという軟膏のお話です。

 

この軟膏、眼科の先生の中には多用される先生もいるようです。

なぜか?この薬には抗炎症作用を持つステロイドと抗生剤の双方の成分が入っているからです。

どちらにも効くので、処方する。

という先生も多いようです。

 

でも、逆に問題もあります。

湿疹だった場合は抗生剤は不要ですし、感染だった場合、ステロイドは治療を遅らせます。

つまり、どっちつかずということが一つ。

皮膚科のひとりとして見ると、湿疹と感染症の区別も付けられないの?ということになるのです。

もう一つは薬の種類の問題です。

この抗生剤がクセモノです。

抗生剤の成分はフラジオマイシンというのですが、

この成分でかぶれることがあるのです。

 

一般に塗り薬でかぶれた場合は判断することは比較的簡単です。

塗った部分が赤くなり、痒くじくじくしてきますからね。

シップ負けを想像してもらえばよいでしょうか。

しかし、このネオメドロールEEのフラジオマイシンで負けている場合には

一緒に入っているステロイドにより、かぶれの症状が隠されてしまいます。

でも、完全にかぶれを抑えることができないので、なんとなく落ち着かない赤みとかゆみがずっと続くのです。

 

とまあ、2つの成分がお互いに影響し合い、ワケのわからない症状を作ることになってしまうのです。

なので、私はネオメドロールEEは嫌いなのです。原則、処方しないのはこういったわけです。

 

simple is bestなのです。

兄弟の間での薬の処方

a1180_005955

 

子どもがたくさん来る皮膚科のクリニックをしていると、当然の事ながら兄弟(または姉妹)で受診される方もたくさんいます。

その時によく聞かれる相談が、兄弟の薬の合わせについてです。

いわく、兄弟の間で同じ薬にしたい。いわく、兄弟に処方された薬を使いたい。

という話は聞かれることが結構あります。

今回はこの質問についてお話をしていきたいと思います。

 

 

当クリニックでは、兄弟間の薬の使い回しは推奨しておりません。

 

理由について簡単に説明しましょう。

当然ながら、その子その子によって症状は異なります。

また、「現時点での症状は同じ」出会ったとしても「過去を含めた症状の推移」は必ずみんな異なります。

症状とはその時点のものではあるのですが、川の流れのように、過去の流れを見て、将来を考えるべきものでもあります。

したがって、似たように見える症状であったとしても、薬の処方は変わってきます。

考えて見ればよく分かるかと思いますが、ずっと症状が悪かったけど、たまたま診察時に落ち着いている子どもと、

普段は調子がいいのに、その時たまたま症状が悪くなった子。その二人に同じ処方をしても良いのでしょうか。

ベースの状態を含めて処方というものは考えていかなければいけないのです。

したがって、現時点の症状は似ていてもベースの状態を考えて、処方内容は微妙に変わっていくのです。

 

次に、あえて、同じ薬を処方したとしましょう。その場合には何が起きるでしょうか。

誰かの症状に合わせた処方内容では、別の誰かには合わないでしょう。

具体的には強すぎるか、弱すぎるかです。

強すぎた場合は症状は引くでしょう。しかし副作用のリスクが大きくなります。

逆に弱すぎた場合は副作用こそ出ませんが、症状も引くことは無いでしょう。そして苦しむ時間がより長くなってしまいます。

実際に診察をしていても、他の誰かに処方された薬を流用して、落ち着かない。または悪くなったという話をよく目にします。

結果として、治療期間を長くし、苦痛もより強くさせてしましまうのです。

 

次に、実際に同じ薬を兄弟で使いまわす時の問題も考えてみましょう。

兄弟に薬を使いまわすということは、そのクリームケースには、二人分の雑菌が入るということです。

そしてその雑菌をお互いに移しあいしているということでもあります。

実際にトビヒはそれだけで移ることもあるでしょうし、水いぼも同様です。

経験したことはありませんが、イボもそうかも知れません。

このリスクはひとつのクリームケースから複数に塗らなければある程度は防ぐことができるのです。

 

このように、塗り薬を複数の人数で使いまわすということにはリスクが有ります。

但し、私達も薬を使いまわすデメリットについては承知しています。

同じクリームケースから使いまわすことは容認はできません。

しかし、二人の処方内容や薬の種類は異なるだけでも塗る人間にとっては大きな労力は必要であり、

ストレスとなることは充分に理解できるものです。

したがって、兄弟の間では極力処方の内容は同じようなものにするように努力しています。

しかし、一緒に受信された患者さんでしたら配慮はできるのですが、別別に受診されたばあい、

目の前にいない子の処方内容まで確認しきれないことがあります。

もしもそのような場合は別の子のIDを確認することでその子の処方内容を確認できますので、

お申し出ください。

よろしくお願いいたします。

ありえへん∞世界でみた「ジンバブエの民間療法」には科学的な根拠がある(かもしれない)

800px-Flag_of_Zimbabwe.svg

クリスマスイブの夜、Googleでサンタさんが出陣するのを見ながら娘は寝てしまいました。

 

その後何となく、テレビをザッピングし見つけたのがテレビ東京の「ありえへん∞世界の世界スぺシャル」でした。

 

その中でジンバブエの紹介があり、その最後のコーナーはジンバブエの民間療法が紹介されていました。

紹介された後に、スタジオでは「ありえなーい」の大合唱でしたが、

実は意外に科学的な根拠があるのではないか。

というお話です。

 

さて、番組の内容ですが、 まず一つ目は「傷口を治すのに砂糖を振りかける」ということです。

番組内では傷口を水で消毒し、粉砂糖を振りかけていました。

実はこれ、日本でも使われています。

まあ、粉砂糖をそのままかけるわけではありませんけどね。

精製した白糖を使用することにより、創傷治癒が進むというデータがあります。

白糖は浸透圧が高く、傷口の余計な水分を吸い取ります。

つまり、傷口のむくみをとることができます。

また、繊維芽細胞の増殖を促進する作用もあるとのことです。

 

現在、精製白糖そのものは医薬品にはありませんが、これに消毒剤のイソジンを加えたものは

処方箋医薬品として立派に通用しています。

ユーパスタという名前で処方されていますよ。

 

次に出てきたのは、頭痛に対してある木材を粉にしたものを鼻から吸入するというものです。

木の粉を吸うなんて・・・と思う方もいるかもしれません。

しかし、もっとも有名な頭痛薬はもともとある植物から作られたものです。

 

その頭痛薬はアスピリンです。

アスピリンは正式な名前はアセチルサリチル酸といいますが、大元はサリチル酸です。

そのサリチル酸の安全性を高めるためにアセチル基を付加し、化学的に合成したものがアスピリンです。

そもそも元のサリチル酸はヤナギの木に含まれており、化学的にヤナギの木から分離されました。

そのため、ヤナギsalixから分離されたサリチル酸salicylic acidと呼ばれるようになったのです。

 

もともとヤナギの木が鎮痛作用を持つことは遠くギリシア時代から知られていました。

またアメリカ先住民や日本人の間でも知られている知識でした。
(日本でも歯痛には柳楊枝を使うことで痛みが軽減できることが江戸時代には広く知られていたようです)

したがって、ある種の植物にはサリチル酸が多く含まれている可能性は十分にあるのです。

 

また、番組では鼻から吸引していましたが、これも合理的なのかもしれません。

サリチル酸は強力な酸であり、内服すると胃に障害を与える可能性があります。
(まあ、そのために安全なアスピリンが合成されたのですが)

アスピリンは胃や腸から吸収された後に肝臓でサリチル酸に代謝され、

薬剤としての作用を発揮します。

これに対して、サリチル酸を鼻から直接吸入すると考えると、 直接血管に吸収され、

サリチル酸が頭痛に効く可能性は十分にあり得るのです。

 

まあ、しっかり植物名を確認し、検証したわけではないので、あくまでも仮説ですが、

十分に効果を発揮する可能性はあると思います。

 

私たちは錠剤になった薬剤を飲んでいます。

しかし、その薬剤が開発されるまでは別のものを使用していました。

その薬の祖先は自然に由来するものはほとんどです。

極端な話、薬の祖先はみな民間療法から始まりました。

それを様々な人が少しずつ改良し、使いやすいように作り変えてきたのです。

私たちはそのことを忘れてはいけないと思うのです。