わかばひふ科クリニック(東京都武蔵野市吉祥寺東町)

武蔵野市・杉並区・練馬区他の赤ちゃんから子供、大人、老人まで幅広く診察をする皮膚科クリニックです。アトピーやあざを始め、水虫、とひび、湿疹などの相談・治療を行なっています。

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薬の話

円形脱毛症に対するオルミエント内服の印象は?(2022年11月)

面積の広い円形脱毛症に対する内服薬としてオルミエントが使用できるようになり数ヶ月が経過しました。

当院では現時点において、以前より使用可能であったアトピー性皮膚炎の患者さんでたまたま円形脱毛症を合併した方と、以前より存在する広い円形脱毛症の患者さんそれぞれに数名ずつ使用しております。

今回はその印象についてお話をしていきたいと思います。

 

まずアトピー性皮膚炎の患者さんに合併した円形脱毛症について。

これらの患者さんは定期的に通院し、デュピクセントをすでに投与されている方でしたので、治療をオルミエントに切り替える形になります。

なお、デュピクセントと円形脱毛症についてはまだはっきりと関連はわかっておりません。ただ当院では円形脱毛症の悪化により治療を中断した方が以前におりました。

またアトピー性皮膚炎にはそもそも円形脱毛症を合併することが知られています。

今回治療を開始された方はすべて局所型。そして発症早期からの治療でした。

効果は皆さん数日で毛髪の発生開始しています。実際に2週間後に受信してもらった段階ですでに円形脱毛症の広い範囲に毛髪の発生が見られました。

そして全ての患者さんが毛髪の再生あり。満足して治療を終了と言う形になりました。

もちろんアトピー性皮膚炎が合併していますので、そちらに対して治療を継続していますが、なんとなく皆さんオルミエントを継続することも多いようです。

まあ、そうですよね。別の治療に変更してまた円形脱毛症を作りたくありませんよね。ということで内服の治療を継続するパターンが多いです。

 

次に広範囲の円形脱毛に対する治療についてです。

こちらの患者さんは先程のようには行きませんね。と言うのが現時点での感想です。

まず、生えてくるまでの時間が明らかに長いです。少なくとも2週間では出ることはありませんでした。

1ヶ月以上の治療によってはじめて発毛を確認できるというような状況です。

また生えかたのペースは明らかに遅いです。まずは一部分辺縁にわずかにぽちぽち。

産毛のような非常に細い毛がぽつぽつ生えてくるか、毛穴の中に少し黒いのが見えてくるかというくらいです。アトピー合併の患者さんのようにみるみるというペースではありません。

一言でいうと、手強いです。

実際に薬の説明書にも、「効果が出るまで時間がかかることがあります。36週は見てください」という意味の内容が書かれていますが、全くその通りだと思います。

とにかく時間はかかるので長期戦を覚悟する必要がありそうです。

 

結論です。

オルミエントは有効です。ただし、円形脱毛症の強さで効果の程度が変わってくる。

と考えてよいかと思います。

むしろ気にすべきは円形脱毛症の強さなのでしょう。同じ病名に同じ薬剤をつかってみてこれだけ症状の変化に差が出るのは正直予想外でした。

面積が広いほど、そして期間が長くなるほど治療の効果が現れるまでには時間がかかることが予想される結果でした。

この状況を見ると円形脱毛症の強さが逆に目立ちますね。

 

あとは可能であればもうちょっと狭い面積の円形脱毛症にも使えるように制限を緩和してほしいものなのですが・・・

むしろあまり面積の広くない円形脱毛症の患者さんにこそ使って一気に抑えてあげたい気がしますね。

 

 

デュピクセントの適応年齢が下がるかもしれません?(2022年10月)

先日キャッチしたニュースです。

 

アトピー性皮膚炎の治療薬であるデュピクセントですが、メーカーのサノフィさんから生後6ヶ月以降までの適応年齢拡大を申請したようです。

クリックして221026.pdfにアクセス

まだ、日程については確認できていませんが、もしもこれが通るとなると日本のアトピー性皮膚炎治療が一変するかもしれません。

今までは大人になって、長い湿疹の履歴のある人が対象となっていました。つまり、過去の積み重ねがあったということです。

しかし今回は湿疹が出てから魔もない小さなお子さんということでもあり、治療の効果が今までよりもより早く、高いことが期待できます。

まあ、まだ投与量や投与間隔などの情報が出ていませんので、今後情報を収集していく予定です。

 

当院でもデュピクセントの適応年齢が拡大したらば積極的に治療を行いたいと考えておりますので、院内の体制も順次整えていきたいと思います。

まずは現状できる治療をしっかりと進めて、湿疹を悪化させないようにしていかないとですね。

子どものアトピー性皮膚炎の治療選択肢は2歳から増えるのです

今日はアトピー性皮膚炎の治療薬についてのお話です。

ここ数年でアトピー性皮膚炎の治療薬の選択肢が一気に増えました。

現在そのハードルは2歳です。

つまり2歳になると一気に選択肢が増えるんですよね。

 

現時点でのアトピー性皮膚炎の治療の選択肢とその年齢です。

0歳からOK

保湿剤

ステロイド外用剤

2歳

プロトピック軟膏

コレクチム軟膏

モイゼルト軟膏

12歳

リンヴォック錠(内服)

サイバインコ錠(内服)

13歳

ミチーガ注(注射)

15歳

デュピクセント注(注射)

オルミエント錠(内服)

※内服、注射剤についてはある一定以上の症状の方のみ投与可能です

 

つまり、2歳までは炎症を抑えるのはステロイド一本槍で行く必要があるのですが、

2歳を過ぎるとそれ以外の選択肢が一気に増えるということです。

また、こちらの外用薬はステロイドではありません。

ということはステロイドの長期投与に伴う皮膚の菲薄化や色素の抜け、多毛といった

副作用もないということになります。

 

もちろん薬というのは必要に応じて使用するものですから、これをもって

ステロイドは一切使用しなくて良くなったということではありません。

ステロイド以外の薬にも欠点や弱点はありますからね。

ただ、多様な薬をうまく使い分けることによってステロイドの使用量は減らせるのではないか。

などと考えています。

 

2歳になったらアトピーの塗り薬、どう選んでいくかと一度検討みる必要がありそうです。

新しい乾癬の薬「ソーティクツ」についてのお話(2022年10月)

今回は新薬のお話です。

といってもまだ販売開始前なので、事前情報レベルですが興味のある方もいるかと思いますので、

簡単に説明をしていきましょう。

 

治療対象疾患は尋常性乾癬および膿疱性・紅斑性乾癬など。

TYK阻害薬と言われますが、大きくはJAK/STAT系の阻害薬と考えて良いでしょう。

すでにJAK阻害薬は皮膚科ではアトピー性皮膚炎、それ以外の科では関節リウマチなどに

使用されていますが、今回は皮膚科の乾癬領域の新薬となります。

 

大雑把な考え方として炎症を起こし進めるには最棒の中から炎症を司る物質が

放出されるわけですが、その放出信号を伝える一つの経路にJAK/STAT系というのがあります。

今回はその一部を抑えることにより、乾癬の症状の悪化を抑えるという考え方になります。

全部を抑えると色々と困ったことになるので、一部だけということですね。

その一部に何があるのかでどんな炎症を抑えるのかが決まってくるのでそこが薬の

作り方のキモになるわけです。

 

効果についてはかなり高いような印象を受けます。

現在当院でも処方されているアプレミラストとの比較試験を行っているのですが、

かなり良好な差が出ているようです。

特にアプレミラストがあまり効果出なかった方でも有効であるというのは

かなり嬉しい結果です。

 

しかし問題もあります。

まずはお値段。まだ出ていませんが、アトピー性皮膚炎などのJAK阻害薬を考えると

アプレミラストよりもお高いでしょうねえ・・・

JAK阻害薬系ということもあり、仕方が無いのですが、感染に対しても弱くなります。

同様に体内にすでに感染が成立している肝炎や結核についてはこの薬を飲むと一気に

症状が出て悪くなる可能性があるので、事前の検査が必要になるかと思われます。

また、今後色々と制限事項が出てくるかもしれません。

あ、あとは新薬なので処方はしばらく2週間分しか出せません。

頻繁に通院する必要があるのはデメリットでしょうね・・・

 

しかし、乾癬に有効な新世代の飲み薬がアプレミラストしか無い中で

次の選択肢が出てくることは望ましいことかと思います。

アプレミラストですが、いろいろな理由で内服を継続できない人もいますし、

飲んでいてもなかなか症状が収まらない人もいます。

そのような方にとっては一つの選択肢となるのでしょうね。

期待したいところです。

あとはお値段ですね。お高いんでしょう・・・?ふう・・・

 

ミチーガの効果が非常に高いと感じたお話(2022年10月)

今年の8月から使用可能になったアトピー性皮膚炎の新規治療薬ミチーガですが、

当院でも数名に治療を開始しております。

今回はその結果についてお話をしていきましょう。

 

まずはミチーガの立ち位置についてです。

現在アトピー性皮膚炎の治療薬は

・デュピクセント、ミチーガ(注射)

・オルミエント、リンヴォック、サイバインコ(内服)

とありますが、ミチーガはその最後発となる注射剤です。

 

特徴としては他の薬剤よりも軽症のアトピー患者さんにも治療可能であること

(EASIという重症度スコアが10以上。他の薬剤は16以上必要です)

治療間隔は4週間とデュピクセントよりも長いこと。

が挙げられます。

また、内服薬のような感染症のリスクが無いこともメリットと言えるでしょう。

 

ただ欠点もあります。

炎症そのものを抑える他の薬剤と異なり、かゆみだけを抑える薬剤であること。

結果として湿疹がなかなか落ち着かない可能性があります。

また、治験の結果は他の薬剤に一段落ちる状況でした。

その部分が使用するまでは少し心配ではあったんですよね・・・

 

そこで注射可能なEASI10から16以上の患者さんには上記のお話をした上で

治療を希望されるか確認しました。

以前よりかゆみに悩まされていた方でしたので一も二もなく承知。

そのお話を確認したあとに治療開始しました。

 

治療結果です。

結構よいですね。想定以上です。

というのが私の感想です。

 

皆さん、調子良くなっています。

かゆみを抑えるだけでもそれだけ湿疹を抑えることになるんですね。

というのが正直な印象です。

 

症状の改善もそうなのですが、それよりも患者さん本人の感触がより高く

こちらがびっくりするくらいの強さでした。

皆さん、激推ししています。

 

治療効果の低さというデータの問題がありますが、どうもそのくらいの差であれば

実際に問題にはならないようです。

というよりもいずれもデータの数字が良すぎるので比較できないというのがあるのかもしれません。

 

ミチーガ、積極的に治療を勧めていきたいものです。

アトピー性皮膚炎の全身治療を希望の方で「デュピクセントを使うには少し症状は弱いねえ」

と言われた方がもしもおりましたら一度ミチーガについて相談してみてはいかがでしょうか?

当院でも積極的に治療を行っていますよ。

アトピー性皮膚炎治療外用薬の比較(2022年9月版)

現在のアトピー性皮膚炎に使用される塗り薬についての比較表を簡単ではありますが、作ってみました。

それぞれ利点・欠点がありますので、うまく組み合わせて副作用がより少ない、そしてより効果の高い治療法を目指していきたいところです。

いつか時間があったらそれぞれに文章を書いてまとめてみたいところですね。

 

脇汗の塗り薬が好評です(ラピフォートワイプ・エクロックゲル)

昨年に発売されたエクロックゲル、
今年にはラピフォートワイプが発売され、
腋の多汗症に対しての治療が始まりました。

以前の塩化アルミニウムに比べての評価は皆さん良いようです。

純粋な発汗量(満足するかは別として)は明らかに減少傾向あり。
また、満足度も結構高い印象を受けています。

 

実際にうちの娘(臨床試験年齢以上)でも使ってもらったのですが、
明らかに汗の出方は違うというコメントでした。

あと、意外だったのは手汗にも効果が出たという話です。

 

つまり、薬は腋の下に塗るのでその部分には比較的高い濃度の薬剤が回ります。
その薬剤は血液に入り、手の汗にも影響をしたと考えることができます。

まあ、手汗についてはおまけのような作用ではありますが、
これはこれでありがたい話ではあります。

 

ただし、気をつけてほしいことがあります。
手には塗らないこと。

こちら、手に塗ってしまうと、手が顔に触れたときに顔の皮膚に薬がくっつきます。
そうすると目や口についての副作用が出てしまうことがあるんですね。

 

なので、お約束。腋の下のみに薬は塗ってくださいね。

 

○○はじめました!

暑い日が続きますが、このフレーズの○○には何を皆さん予想されるでしょうか。

冷やし中華?
かき氷?

今日は新薬のお話です。

通常皆様が処方されているお薬は、厚生労働省により薬の効果と安全性を審査され、医薬品の価格が決められたお薬です。

製薬会社が薬を開発するのに10〜20年かかると言われており、やっとできた薬を厚労省に申請して承認されるのにさらに約1年かかります。

やっと薬価が決まり、発売日が決定しても、実際にはなかなか処方してもらうことができません。

なぜでしょう。

病院にはさまざまな種類があり、誰もが知るような大学病院や大病院から、町の開業医までさまざまです。

入院施設をもつような大きな病院は、診療科もたくさんあり、医師もたくさん所属しています。
そこで処方されるお薬の種類は膨大です。

現在保険で処方可能なお薬は1万4000種類ほどありますが、さすがにそれらすべてから選ぶには多すぎるので、あらかじめ各病院で処方できる薬を選んでおきます。これを採用薬といいます。

スーパーによって、置いてあるメーカーや商品が違うのと同じですね。

逆に言えば、採用されなければ処方してもらうことができないのです。

大きな病院では、新しく出た薬を採用してもらう場合、各病院の決まりに従って、1〜2ヶ月に1回の委員会に申請して認められる必要がありますが、この申請前にも薬剤師によるヒアリングがあったり、医師への説明会があったりと、とにかく時間がかかるのです。

こうしたプロセスを経てやっと処方可能となるので、実際にはなかなか新しい薬はもらえないことが多くなってしまいます。

街の開業医の場合は、こうした過程がないため、医師の方針一つで、すぐに処方が開始できるという小回りの良さがあります。

大学病院での勤務時に、こうした時間差を、薬剤師として何度も目にしました。
新規入院患者さんの持ち込み薬が、院内で用意できないことがあったのです。

当院では、よいお薬はなるべく早く患者さんのお手元に届けたいので、医師、薬剤師、看護師、医療事務すべてが参加した院内での説明会や勉強会をした上で、薬価収載からすみやかに処方することを心がけております。

最近だと6月に収載されたアトピー性皮膚炎のお薬を同月より処方開始しております。
すでに、そのお薬で症状が良くなった患者様も出ています。
そうした経過を見ると、本当に嬉しいです。

患者さんと一緒に病気と闘うために、少しでも武器(薬)の種類は多い方がいいので、もし気になる新薬がありましたら、ご相談くださいね。

円形脱毛症の飲み薬が使えるようになるようです

本日ほやほやのニュースです。

 

現在アトピー性皮膚炎に使用されている「オルミエント」という飲み薬が

円形脱毛症にも使えることになりました。

今後の情報を確認していく必要がありますが、処方可能になりましたら当院でも積極的に処方を行う予定にしています。

 

円形脱毛に効果が有るということは実は2.3年前から知ってはいました。

治験というテスト段階の結果をいくつも目にしていることや治験に参加した先生からの印象という言葉を色々と聞いていましたので、非常に期待していました。

また、昨年からアトピー性皮膚炎に使用できるようになりましたが、円形脱毛症を合併したアトピー性皮膚炎の患者さんがこの薬を飲んで、一気に髪の毛が出るのを見てました。

 

なので、今回正式に使用可能になったことは非常に嬉しく思っています。

効果も今までの印象では結構高そうなので、そちらも期待ですね。

 

ただ、現状では誰にでも使用可能というわけではなさそうです。

薬の説明書を読んでいる限りでは、頭部の50%以上の面積に円形脱毛があること。

また、6ヶ月以上生えてこないこと。

という条件が付いているようです。

もう一つ、飲み方から想定される問題として金額がそれなりに掛かることがあります。

自己負担3割の方で月に5万円弱は必要かもしれません。

もちろん量を減らす、間隔を開けるなどすれば金額は抑えられるかもしれませんが、

その分効果も落ちてしまう可能性はあります。

 

今回の治療薬はいくつか問題はありますが、円形脱毛の治療が一気に変わる可能性を秘めた薬剤だと考えています。

 

今後も情報が集まり次第こちらに掲載を進めて行きたいと思います。

ニキビ・ヘルペス+アトピー性皮膚炎=モイゼルト?

思春期のアトピー性皮膚炎の患者さんに対する薬の選択って結構難しいことがあります。

アトピー性皮膚炎の治療薬は基本的にニキビを悪化させてしまうからです。

感染症とアレルギーはオモテウラの関係なのでやむを得ないところがありますが、最近その図式が崩れてくました。

理由は研究の進歩。一体であり不可分と思われていた、感染症とアレルギーの関係が崩れてきたからです。

つまり、アレルギーは抑えるけれども感染症が悪化させないという薬が色々と出てきたのです。

 

すでに内服薬ではデュピクセントが発売されています。またそろそろミチーガも発売されますが、こちらも易感染性の副作用はありません。

塗り薬でもモイゼルトという薬が今年の6月から使用可能になりました。こちらもありがたいことに易感染性の副作用はありません。

 

つまり、思春期のアトピーに使ったときにニキビの悪化を防げるのではないか?

と考えることができるのです。

またヘルペスが頻繁にでるアトピー性皮膚炎の方にもよい治療法になるのではないかと考えています。

 

ただ、いかんせん新規発売の薬ですので、情報の蓄積がありません。

大事な皮膚炎の治療効果は読みきれないところもありますが、副作用の面では明らかなメリットのある塗り薬となっています。

 

ニキビも抑えつつアトピー性皮膚炎も抑えていきたい。

そんな過去には欲張りと思われていた希望も今後は当たり前の様に叶っていくのかもしれません。

 

モイゼルトを試してみたいという方は外来で一度声をかけてくださいね。