わかばひふ科クリニック(東京都武蔵野市吉祥寺東町)

武蔵野市・杉並区・練馬区他の赤ちゃんから子供、大人、老人まで幅広く診察をする皮膚科クリニックです。アトピーやあざを始め、水虫、とひび、湿疹などの相談・治療を行なっています。

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〒180-0002 東京都武蔵野市吉祥寺東町2丁目11-2 伊藤ビル1F

薬の話

兄弟の間での薬の処方

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子どもがたくさん来る皮膚科のクリニックをしていると、当然の事ながら兄弟(または姉妹)で受診される方もたくさんいます。

その時によく聞かれる相談が、兄弟の薬の合わせについてです。

いわく、兄弟の間で同じ薬にしたい。いわく、兄弟に処方された薬を使いたい。

という話は聞かれることが結構あります。

今回はこの質問についてお話をしていきたいと思います。

 

 

当クリニックでは、兄弟間の薬の使い回しは推奨しておりません。

 

理由について簡単に説明しましょう。

当然ながら、その子その子によって症状は異なります。

また、「現時点での症状は同じ」出会ったとしても「過去を含めた症状の推移」は必ずみんな異なります。

症状とはその時点のものではあるのですが、川の流れのように、過去の流れを見て、将来を考えるべきものでもあります。

したがって、似たように見える症状であったとしても、薬の処方は変わってきます。

考えて見ればよく分かるかと思いますが、ずっと症状が悪かったけど、たまたま診察時に落ち着いている子どもと、

普段は調子がいいのに、その時たまたま症状が悪くなった子。その二人に同じ処方をしても良いのでしょうか。

ベースの状態を含めて処方というものは考えていかなければいけないのです。

したがって、現時点の症状は似ていてもベースの状態を考えて、処方内容は微妙に変わっていくのです。

 

次に、あえて、同じ薬を処方したとしましょう。その場合には何が起きるでしょうか。

誰かの症状に合わせた処方内容では、別の誰かには合わないでしょう。

具体的には強すぎるか、弱すぎるかです。

強すぎた場合は症状は引くでしょう。しかし副作用のリスクが大きくなります。

逆に弱すぎた場合は副作用こそ出ませんが、症状も引くことは無いでしょう。そして苦しむ時間がより長くなってしまいます。

実際に診察をしていても、他の誰かに処方された薬を流用して、落ち着かない。または悪くなったという話をよく目にします。

結果として、治療期間を長くし、苦痛もより強くさせてしましまうのです。

 

次に、実際に同じ薬を兄弟で使いまわす時の問題も考えてみましょう。

兄弟に薬を使いまわすということは、そのクリームケースには、二人分の雑菌が入るということです。

そしてその雑菌をお互いに移しあいしているということでもあります。

実際にトビヒはそれだけで移ることもあるでしょうし、水いぼも同様です。

経験したことはありませんが、イボもそうかも知れません。

このリスクはひとつのクリームケースから複数に塗らなければある程度は防ぐことができるのです。

 

このように、塗り薬を複数の人数で使いまわすということにはリスクが有ります。

但し、私達も薬を使いまわすデメリットについては承知しています。

同じクリームケースから使いまわすことは容認はできません。

しかし、二人の処方内容や薬の種類は異なるだけでも塗る人間にとっては大きな労力は必要であり、

ストレスとなることは充分に理解できるものです。

したがって、兄弟の間では極力処方の内容は同じようなものにするように努力しています。

しかし、一緒に受信された患者さんでしたら配慮はできるのですが、別別に受診されたばあい、

目の前にいない子の処方内容まで確認しきれないことがあります。

もしもそのような場合は別の子のIDを確認することでその子の処方内容を確認できますので、

お申し出ください。

よろしくお願いいたします。

ありえへん∞世界でみた「ジンバブエの民間療法」には科学的な根拠がある(かもしれない)

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クリスマスイブの夜、Googleでサンタさんが出陣するのを見ながら娘は寝てしまいました。

 

その後何となく、テレビをザッピングし見つけたのがテレビ東京の「ありえへん∞世界の世界スぺシャル」でした。

 

その中でジンバブエの紹介があり、その最後のコーナーはジンバブエの民間療法が紹介されていました。

紹介された後に、スタジオでは「ありえなーい」の大合唱でしたが、

実は意外に科学的な根拠があるのではないか。

というお話です。

 

さて、番組の内容ですが、 まず一つ目は「傷口を治すのに砂糖を振りかける」ということです。

番組内では傷口を水で消毒し、粉砂糖を振りかけていました。

実はこれ、日本でも使われています。

まあ、粉砂糖をそのままかけるわけではありませんけどね。

精製した白糖を使用することにより、創傷治癒が進むというデータがあります。

白糖は浸透圧が高く、傷口の余計な水分を吸い取ります。

つまり、傷口のむくみをとることができます。

また、繊維芽細胞の増殖を促進する作用もあるとのことです。

 

現在、精製白糖そのものは医薬品にはありませんが、これに消毒剤のイソジンを加えたものは

処方箋医薬品として立派に通用しています。

ユーパスタという名前で処方されていますよ。

 

次に出てきたのは、頭痛に対してある木材を粉にしたものを鼻から吸入するというものです。

木の粉を吸うなんて・・・と思う方もいるかもしれません。

しかし、もっとも有名な頭痛薬はもともとある植物から作られたものです。

 

その頭痛薬はアスピリンです。

アスピリンは正式な名前はアセチルサリチル酸といいますが、大元はサリチル酸です。

そのサリチル酸の安全性を高めるためにアセチル基を付加し、化学的に合成したものがアスピリンです。

そもそも元のサリチル酸はヤナギの木に含まれており、化学的にヤナギの木から分離されました。

そのため、ヤナギsalixから分離されたサリチル酸salicylic acidと呼ばれるようになったのです。

 

もともとヤナギの木が鎮痛作用を持つことは遠くギリシア時代から知られていました。

またアメリカ先住民や日本人の間でも知られている知識でした。
(日本でも歯痛には柳楊枝を使うことで痛みが軽減できることが江戸時代には広く知られていたようです)

したがって、ある種の植物にはサリチル酸が多く含まれている可能性は十分にあるのです。

 

また、番組では鼻から吸引していましたが、これも合理的なのかもしれません。

サリチル酸は強力な酸であり、内服すると胃に障害を与える可能性があります。
(まあ、そのために安全なアスピリンが合成されたのですが)

アスピリンは胃や腸から吸収された後に肝臓でサリチル酸に代謝され、

薬剤としての作用を発揮します。

これに対して、サリチル酸を鼻から直接吸入すると考えると、 直接血管に吸収され、

サリチル酸が頭痛に効く可能性は十分にあり得るのです。

 

まあ、しっかり植物名を確認し、検証したわけではないので、あくまでも仮説ですが、

十分に効果を発揮する可能性はあると思います。

 

私たちは錠剤になった薬剤を飲んでいます。

しかし、その薬剤が開発されるまでは別のものを使用していました。

その薬の祖先は自然に由来するものはほとんどです。

極端な話、薬の祖先はみな民間療法から始まりました。

それを様々な人が少しずつ改良し、使いやすいように作り変えてきたのです。

私たちはそのことを忘れてはいけないと思うのです。

爪噛み癖にバイターストップを使ってみる。特にアトピー性皮膚炎の子には有効かもしれない。

マヴァラ バイターストップ/10ml 【HTRC3】

 

外来で診察をしていると、結構な頻度で目にするのが爪噛み癖です。

両手指の爪前部が凸凹していることもあります。

 

この爪噛み癖。くせがあること自体は様子を見てもいいのではと思うのですが、

この凸凹している爪で皮膚をひっかくと、結構な確率で切り傷ができてしまいます。

出血して、かさぶたが出来てしまうと、そのかゆみが頑固になってしまいます。
(これは科学的にも証明されているのです)

なので、特に湿疹の子の爪噛みを止めることはひとつ重要な事になります。

でも、痒い→精神的ストレス→爪噛み→掻爬→湿疹の悪化→痒い

といった悪循環をどこで断ち切るかは問題になります。

 

このような場合、まず湿疹を抑えてということになりますが、掻爬が強く湿疹を抑えきれないことも有ります。

でも、このバイターストップを使うことで湿疹を間接的に抑えることが出来るかもしれません。

 

バイターストップの原理は簡単です。

「苦い。」ただそれだけ。

方法は爪に塗るだけ。爪をなめたらとても苦く感じるために爪噛みをやめる。

という算段です。

そうすると、噛んでいる子でも、爪を噛むと苦くてイヤだ

ということに気がつくので、爪を噛まなくなるわけですね。

いわゆる条件付けという方法です。悪い言い方をすれば「パブロフの犬」でしょうか。

 

この方法ですが、以前に試したことが有ります。

使用する薬剤はゲンタシン軟膏。

傷薬に使うアレです。緑のキャップ。

この薬も結構苦いのです。

そのために爪に塗ることで爪噛みの対策としたことが有ります。

結果は半分位の人で効果ありました。

 

今度、実際に自分で使ってみて苦さを確認したいと思います。

 

 

追記

普通の子の普通の爪噛みを無理に止める必要性は無いと考えます。

爪噛みというものは、その子に加わるストレスを自分なりの方法で解消しようとして出てくる行動です。

もしも、この薬で爪噛みを止めさせたとしても、時には別の方法でストレスを解消しようとするかもしれません。

例えば、チックや抜毛などという形で出ることも有ります。

使用の際にはメリットとデメリットをしっかりと考える必要があります。

心配でしたら近くの小児科、皮膚科の先生に相談してみてください。

年が明けたら花粉症の治療を開始しましょう

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早速来年の花粉情報が開示されました。(リンクはこちら

 

幸いなことに、来年は「裏年」らしく、今年の半分くらい、いつもよりも少なめです。

しかし、気をつけるべきことですが、スギの花粉の飛散開始は2月上旬なのですが、

花粉の断片(でも抗原性はあります)はその前から飛んできます。

 

では、1月下旬から対策すればいいのか?

というと、これもまた違います。

 

花粉症の飲み薬ですが、(本当はどんな薬もそうなのですが)

飲んでその日から効くということは無いのです。

血液の中に十分な量が持続して現れるには数日かかるのです。

ですので、飲み薬は早めに飲み始めること。

これが大事です。

 

したがって、お正月が終わったら飲み始める。

結構違いますよ。

 

・・・まあ、私は毎年飲み忘れてしまい、痒くなってからあわてて飲み始めるんですけどね。

アトピー性皮膚炎 成育式塗り方についてのご案内

塗り薬の使い方

 

当院でアトピー性皮膚炎や乾燥性湿疹、乾燥肌の治療をされている患者さんも

おかげさまで徐々に増えてきました。

でも、塗り薬の使い方で戸惑われている方も多いようです。

今回は「わかば式アトピー性皮膚炎治療マニュアル」の勉強会の中から

塗り薬の使い方について簡単にお話をしていきたいと思います。

もしも詳しいお話を聞いてみたい方は勉強会にご参加くださいね。

 

当院のお薬の塗り方はいわゆる成育方式を取っています。

他の病院とは少し違う塗り方をしています。

その理由についてお話をしていきましょう。

 

まず、そもそものアトピー性皮膚炎についてですが、こちらは体質と周囲の環境が影響します。

つまり、家族にアトピー性皮膚炎の方がいると発症しやすい。

皮膚のバリアを司る遺伝子に問題があれば発症しやすい。

ということもご存知の方は多いでしょう。

また、周囲の環境との関連についても、冬になると乾燥するという話があるのも理解できるのではないでしょうか。

 

遺伝子も全身の皮膚に影響しますし、環境も全身の皮膚に影響するのです。

そして、全身の中で刺激を受けた部分に湿疹ができるのだと考えられます。

 

ということは・・・

何もない皮膚に湿疹ができてくるのではなく、弱い湿疹が出ている皮膚の一部に強い湿疹ができる。

ということになります。

実は乾燥し、粉を吹いている状態で既に顕微鏡では湿疹ができ始めていることが知られています。

 

そうなると、治療方法も変わります。

何もない皮膚に湿疹が出来るのでしたら「保湿剤+ステロイド」で十分でしょう。

しかし、弱い湿疹に強い湿疹ができているわけですから、保湿剤では不十分です。

実際に薬を塗るのをやめると、すぐに湿疹が出来てしまうのもそういうわけです。

つまり、「弱いステロイド+強いステロイド」という形で塗り薬を使っていく必要があるのです。

 

当院ではこの「弱いステロイド+強いステロイド」を「下地+上塗り」と呼んで使っていくのです。

もちろん症状が落ち着いている子には保湿剤も使いますが。

 

次のお話は下地と保湿の使わいわけのお話です。

 

 

画期的な治療法の広がり方

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さて、今回は「画期的な治療法」が見つかった時に、それがどの様にして

世界に広がっていくのかというお話をしてみましょう。

 

いちご状血管腫という病気が有ります。これは赤ちゃんのみに見られる病気なので、あまり一般的ではありません。

血管腫=赤アザと病名からは考えられますが、どちらかと言うと腫瘍(良性)性の病気です。

出現は生後1ヶ月まで。その後はできることがありません。赤い発疹で出現し、それが広がっていきます。

生後6ヶ月がピークで、その後しぼんでいきます。赤い色は完全になくなりますが、しわができた場合はそれが残ってしまいます。

 

このいちご状血管腫ですが、治療法は良い物がありませんでした。

液体窒素などで凍らせていた時代も有りましたが、これは傷跡になりやすく、

レーザーは現在の主流ですだ、厚さをましたものには効果が減ってしまいます。

ステロイドの内服も有効ですが、やはり副作用が心配・・・

と、治療の主体は経過観察でした。

 

でも、このいちご状血管腫がおおきくなると、さあ大変。

目を塞ぐと視力に影響が出ますし、喉で大きくなると呼吸や食事のじゃまになります。

擦れてえぐれて出血するとそれこそ数週間良くならないし・・・

逆にステロイドはしばらく飲まないといけないし・・・

ということで結構やきもきすることのある治療法でした。

 

と、そこに出てきたのがインデラル内服という治療法でした。

ちなみに、インデラルというのは血圧の薬です。

2008年にNew England Journal of Medicineという雑誌にこの治療法が掲載された所、

非常に大きな反響を呼びました。

これはたまたま心臓病の有る患者さんにいちご状血管腫が出来たが、インデラルを内服した所

非常に効果があったという報告です。

実は、この段階では「なぜ効果あるのか」についてはわかりませんでした。

しかし、患者さんに使った所、効果があることが確かなのです。

その後、世界中でいちご状血管腫に対するインデラル内服について追試が行われました。

そして、どの調査でもいちご状血管腫に対して非常に効果の有ることがわかりました。

 

私はその情報を知ったのは2010年ころでした。

最初はびっくりした記憶があります。

でも、実際に使用した所、確かに効いているのです。

劇的といっていいくらいです。

 

さて、現在、このインデラルのいちご状血管腫に対する治療法がどうなっているかというと、

日本でも欧州でも既に治験が開始されています。

数年後には医療保険で問題なく使用することが出来る薬剤になるでしょう。

 

新しい治療法が見つかって数年です。

その数年で薬剤は市販され、普通に保険診療のなかで治療ができるようになるのです。

 

このお話は非常にうまく行った例かとは思います。

しかし、私達医療従事者が「効果的な新しい治療法」を見つけたらどのように振る舞うのか。

そして、どのように医療を変えていくのか。

ということを如実に示す一例になると考えます。

 

本当にいいものでしたらすぐに世の中に広がりますよ。

というお話でした。

デコレーション・クリームケースの販売を開始しました

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いよいよ10月に入り、乾燥が気になって参りました。

ふと見ると、子供の足のすねや唇に、カサカサが出始めており、

そろそろ本腰をいれての保湿の必要性を痛感。

 

とはいえ、面倒ですよね・・・

入浴後はもちろんですが、カサカサ撃退には、こまめな保湿が必要です。

 

少しでも、楽しい気分で保湿が出来るよう、我が家ではかわいいケースに小分けにして、

バッグの中、ポーチの中、キッチン、リビングなどのあちらこちらに置いておき、

『気づいたとき保湿』を心がけています。

 

そんな時にご利用いただければと思い、かわいいクリームケースをご用意いたしました。

 

クリームをつめる他にも、私は外した指輪やネックレスを、なくさないように入れておくのにも使っています。

 

クリニックにいらした際は、受付横においてありますので、のぞいてみてくださいね。

 

【使用の際の注意】
クリームをつめる際は、消毒用エタノール等でケースの中を清潔にした上でお使いになることをお勧めいたします。
また、小分けした物は空気に触れ、酸化して変質しやすいので、なるべく早く使い切るようにしてください。
モニターさんより、ゆるめ(とろとろ)のクリームは漏れることがあるとのご意見を頂きました。
クリームをつめる際は、ご注意ください。

 

武蔵野市吉祥寺東町2-11-2伊藤ビル1F
わかばひふ科クリニック

JTC801に期待すること 予習編 フィラグリンとアトピー性皮膚炎の関係について

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さて、今回は昨日から様々なメディアで話題になっている、京都大学皮膚科学教室による、アトピー性皮膚炎に対する内服薬(候補)

JTC801について、皮膚科医の立場から解説をしていこうと言う、(ある意味無謀な)試みです。

 

プレスリリースはこちら.

ニュースの記事だけでは非常にわかりにくいです。

多分、新聞記者の方もあまりよく理解していないのかもしれません。

そもそも・・・がわかっていないのではないでしょうか。

 

そもそも、皮膚の一番大事な役目は、皮膚の外と中を区分けすることです。

外界の成分が生体内に入ると、アレルギーの反応を起こします。

また、人間の構成成分が外に出ることも、問題となります。

特に問題になるのは水分です。

陸に上がった動物はいかに体内の水分を外に出さない様にするかが、きっと進化の大きな問題になったでしょう。

その大切な皮膚のバリア機能が破綻すると、湿疹が起こります。

 

特にアトピー性皮膚炎の病気の一部は皮膚のバリア機能の障害によるものということがわかってきました。

(もちろん、アレルギーも大きな原因になります。どちらが主で従かはまだわかっていないことも多いのですが。)

子どもにアトピー性皮膚炎が多いのも、皮膚のバリア機能が未熟だからと考えるとつじつまが合います。

しかし、その一部に、フィラグリンと呼ばれるタンパクの遺伝子異常を持っている人が入ることがわかってきました。

概ね、患者さんの1/3から1/2位の人がそうだと言われています。

 

なぜ、フィラグリンタンパクの異常がアトピー性皮膚炎を引き起こすのか?

これはフィラグリンが皮膚のバリア機能に重要な役目を持っているからです。

もともと、フィラグリンは皮膚の細胞の中で作られます。

細胞の中の骨の成分、ケラチンとともに皮膚のバリア機能を作り、

最終的には分解されて、天然保湿因子となります。これも皮膚のバリア機能の補助となるのです。

 

つまり、遺伝的な問題がありフィラグリンの作成量が減ると、皮膚のバリア機能が悪くなり、結果的に

アトピー性皮膚炎になりやすくなってしまいます。

 

・・・さて、ここまでの話で皮膚バリア機能障害の解決策は出てきたのではないでしょうか。

なんとかして、このフィラグリンのタンパクを増やしてあげれば、皮膚バリア機能の改善につながり、

ひいてはアトピー性皮膚炎の予防につながるということになるわけです。

今回の発表はある化学物質がこのフィラグリンの産生を進めるということなのです。

 

後日、論文を読んでみて、どのようにしてこの研究が進められたかを見ていきたいと思います。

ディオバンに対するある皮膚科医の見解

ディオバンの、論文の改ざん問題はなかなか落ち着かないようです。

 

まとめはさまざまなサイトで見ていただければ良いのですが、

ディオバンの医師主導治験で行われた、データ改ざんにより、

高血圧関連イベントが不正に低く見積もられたことが問題です。

 

皮膚科医として、ディオバンは今後処方する可能性は非常に低いのですが、

この件について何度かノバルティスさんからお話を伺うことが出来ました。

 

というのも、ディオバンに問題に関してはもちろん元社員とされる方に問題が有るのはもちろんですが、

ノバルティスさんが扱っている他の薬剤、特に自分が処方する可能性のある薬剤でも同様の問題が有るかが

知りたかったのです。

 

今回、ノバルティスさんから話を訊くことが出来たのは

その元社員の方は、ディオバン以外の試験には関わっていなかった

との情報のみでした。

ここで、あれあれとおもったので、詳しく話を聞きましたが、

皮膚科関連の薬剤で同様のデータ改ざんが行われたかについては資料がないそうです。

更に聞いてみると、まったく検討していない。

との返事が帰ってきました。

 

 

さて、ここで問題が浮かんできます。

まず、1つ目。

この元・社員という方は、まったく今まで同様の研究に携わることなく、いきなりディオバンの試験に関与し、

初めての研究で大きなデータの改竄に関与し、そのまま退職したのでしょうか。

他の業界では普通は小さな研究や試験に何度か参加しながら、徐々に大きな研究に関与するものでは無いでしょうか。

また、最初の研究でいきなりデータの改竄に関与するものでしょうか。

(心理学的には最初はより小さなことから始まるのでは無いでしょうか)

この方は、最初から研究開発部門にいたのか?営業部門から移ったのか?以前は他社にいたのか?

もしも他社にいたならどんな会社でどこでどんなことをしていたのか?

非常に心配になってしまいます。

なお、この件に関しては後日調べた結果を持ってくるとのことでした。

 

次に2つ目。

果たして他の薬剤は問題ないの?

という心配が出てきます。

このような事件が起きたということは、ノバルティスさんは他の製薬メーカーよりも

同様の事件が隠れている可能性は高いと考えてしまいます。

それを心配しているのですが、返事はまさかの「調べていない」でした。

統計的調査でもやってもらえると良いのですが、どうもその様子も無さそうです。

 

ここまで来ると、ノバルティスさんの姿勢にも疑問を感じてしまいます。

結局、「ディオバンの臨床試験問題」のみを解決することしか考えていないのではないかと疑念が生じてしまいます。

私は心配しているのは、「すべての薬の臨床試験そのものに」対しての疑いの目でみてしまう。

ということなのですが、あまり積極的にその問題に対処しているように見えないのです。

 

現在の薬剤というものは非常に複雑な試験の上に成り立っています。

今回は医師主導型治験という問題であり、ディオバンによる降圧作用そのものには問題はなかったのです。

しかし、国に認可申請するときにデータに意図的な変更が加えられていたら、それを指摘することは専門家でも難しいものです。

 

当然薬を飲んでいる一般の患者さんは、医師が勧めるからその薬をのむわけです。

今回、その医師が確認するデータが信頼の置けるものではないかもしれない

自分が飲んでいる薬が信頼の置けるものでは無いかもしれない

そのように思わせるに至ったところに大きな問題が含まれているのがわかってしまった。

 

また、問題が起きた時に製薬会社が自ら解決することができない。

ということもはっきりと見られてしまいました。

 

このことは今後大きな問題になっていくのでしょう。

何を信じていけば良いかわからない世界が来ているのかもしれません。

Believe no oneと言われるのは、ドラマの中だけで十分なのですが。

質問:犬がステロイドの軟膏を食べてしまいました。どうしたらいいでしょうか

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回答

あまり気にすることは無いでしょう。今までトラブルになった話は聞いていません。

と今までは答えていたのですが、先日こんなことがありました。

 

そろそろ夕方になろうかという時間です。
1ヶ月ぶりに来院した方が診察に訪れました。
その方は慢性湿疹でステロイドをつけていた方です。
診察室で話を効いていると、どうもあまり良くならないとのこと。
十分効くだけの薬を出したのに、何故と思いながら話を効いていたのですが、

ウチで飼っていた犬が薬を全部食べてしまいました。

とのこと。な、なんだってー。

それは良くならないはずと思い、詳しく聞いて見ることにしました。
なんでも、机の上に出しっぱなしにしていた軟膏壷を勝手に開けてしまい、全部キレイに食べてしまったとのことです。

犬はどうなったかと聞いた所、入院して血液検査をしたと。

な、なんと。
犬に健康被害が出たのを聞いたのは初めての事なので、詳しく聞いてみたら、
体重が2,3Kgの仔犬だったそうです。

 

 

いままで、何度か同様の話を聞いたことがありますが、
今回の話は一番重症でした。(犬にとって)

当然、薬ですから、摂取量と体重によって濃度が変わってきます。
また、ステロイドの薬の強さも影響してくるでしょう。

振り返って考えてみると、いままで問題がなかったのは、

ロコイドクラスの塗り薬を10g,体重10kg以上の成犬が食べた

話だけでした。
今回は

アンテベートクラスの塗り薬を10g、体重2,3kgの仔犬が食べた

わけですから、薬剤が吸収された時の濃度、効果は当然異なるわけです。

そのため、血液検査で異常が出たのでしょう。
これも、ステロイドそのものの薬理作用か、お腹が痛くなったので出た反応なのかはわかりませんが。

 

でも、最終的には何事も起きなかったので、一安心です。
良かったよかった。

 

今後、タイトルの質問をされたら、

「薬の強さ、濃度、摂取量、犬の体重によって症状の出方は変わるので、心配なら一度獣医さんに相談して下さい」

と答えるようにします。

 

 

 

でも、一番疑問なのは、どうして犬はステロイドの塗り薬が好きなんでしょうか。
美味しいのかなあ。よくわかりません。

一度、メーカーさんに聞いたのですが、呆れられてしまいました。

もしも、ご存知の方がおりましたらご一報いただけますでしょうか。