先のブログに記載のとおり、8月から新規アトピー性皮膚炎の注射剤が開始になりました。
種類も増え、それぞれの特徴も出てきましたので簡単にまとめてみました。
院内で患者さんに配布用の資料ですので、一部文面を省略している部分もあります。
興味のある方はそれぞれのメーカーのWebを見て情報を入手してみてください。
また、当院では外来にて随時相談を行っております。
治療を希望される方は一度外来を受診の上、治療法を検討してみてはいかがでしょうか?
TEL050-3355-9592
〒180-0002 東京都武蔵野市吉祥寺東町2丁目11-2 伊藤ビル1F
なんかタイトルが小難しいお話になっていますが、簡単にまとめると
「なにか災害が発生したときに治療を継続できるようにしておきましょう」
というお話です。
今年のお盆休みは宮崎県の地震に始まり、台風に終わるといったところでしょうか。
神奈川の地震もありましたね。
ということで災害時の備えについてきちんと考えなければと思った方もいるかも知れません。
今回のお話はアトピー性皮膚炎の災害時の対策についてです。
ウチでのお話が主体となりますので、参考に留めていただき、
それぞれの主治医の先生に相談してくださいね。
アトピー性皮膚炎で災害時に問題になるのは全身療法との関連でしょうか。
定期的に注射を打つ必要がある、そして打たないと湿疹が一気に悪化する
という状況に被災すると追い込まれる可能性があります。
そして、こちらは災害時だけの問題ではなくて、治療提供者側についての問題も提起します。
実際に昨年起こった事例ですが、全身療法を処方している皮膚科の先生がお亡くなりになった。
そのために全身療法を継続できずに困ってしまった。
というケースも起こりました。
今だと、そういった突然死のような状況だけではなく、新型コロナの後遺症。などということも考える必要があるでしょう。
では全身療法のリスクはどこに有るか?
それは在庫管理にあります。
内服にしても注射にしても、手許にどれだけの薬を用意しているか?
がポイントになりますね。
つまり、手許がゼロなら次の注射時期までしかリミットはありませんが、
残っていればその本数だけリミットは伸びます。
つまり、一番脆弱なのは、
「院内に定期的に受診し、注射を行っている患者さん」
ということになるわけですねえ。
今回のお盆のあれやこれやを見て、今までは対応を取っていなかったこのリスクについては
(どうするかはずっと考えていましたが)
今後積極的に対応を取っていくことにします。
処方箋で薬をもらっている方はできればお早めに受診していただくこと。
こちらは今まで通りになります。
※なお、最大3ヶ月分までの処方であることはあらかじめご了承ください
内服についても同様、1ヶ月毎に受診をしていただく形になります。
最長で手許には1ヶ月分の薬剤が用意できる形になります。
変更するのは当院で注射を打っている患者さんです。
こちらについても注射薬を3ヶ月分処方させていただきます。
そして、毎回通院時にどこまで自己注射ができるか確認をし、
自分で出来るとことまで進めていく形に変更させていただきます。
もちろんそれで自己注射が出来るようになればそのまま自宅で注射していただいて構いません。
また、3ヶ月分まとめて処方することにより、以下のメリットが生じます
・予約変更の電話をしなくても済む
・発注ミスで受診時に注射薬が届いていない可能性はなくなる
・まとめて処方することで高額療養費の対象となる可能性がある
という所がメリットになるかと思われます。
日本、東京が災害の大い土地であるというのはもう逃れられない宿命のようなものです。
であるならはそれを真正面から受け止めて、しっかりと対策をしていったほうが良いのではないかと思うのです。
運用の変更についてご理解をいただければ幸いです。
2022年12月より、サイバインコの投与制限が解除になります。
今までは新薬ということもあり、2週間の処方制限がありました。
しかし販売開始から1年が経過したとのことで処方制限が解除になります。
当院でも4週間を限度に処方を行うことになります。
(その他のアトピー性皮膚炎内服薬も4週を限度に処方しています)
何度も処方のために病院に通ってもらうのも大変ですからねえ…
それに伴い、当院の全身療法もまた一つ武器が増えることになりました。
今回はその治療法を年齢制限という面から確認したいと思います。
12歳以上
・リンヴォック 15mg(通常量)
・サイバインコ 100mg(通常量)、200mg(倍量) ←New!
13歳以上
・ミチーガ皮下注
15歳以上
・デュピクセント皮下注
・オルミエント 4mg(通常量)
・リンヴォック 30mg(倍量)
となります。
今回の変更に伴い、12歳から常用量で内服しても効果の出ないアトピー性皮膚炎の患者さんには早い段階から倍量投与が可能になりました。
今までは15歳からでしたので治療の幅が一段と広がったものと考えています。
上手に薬を選んでアトピー性皮膚炎をしっかりと抑えていきましょう
アトピー性皮膚炎と受験のお話。
今回は病気そのものが受験に影響するかというお話をしたいと思います。
でも、調べてみたのですが、あまり情報がありません。
但し、一般的にアトピー性皮膚炎という病気そのものは学習能力には直接影響してはなさそうです。
しかし、アトピー性皮膚炎を持っている人が受験に対してどうかと考えると、
やはり不利。ということになるかもしれません。
以下にその考えを述べましょう。
1)痒みによるパフォーマンスの低下。
痒いということはそれだけで勉強の集中を妨げます。
同じ時間勉強をした時に、痒い人はそれだけ能率が落ちる可能性は十分にあるでしょう。
2)治療による時間のロス
アトピー性皮膚炎の人は毎日薬を塗る必要があります。
もしも全身に薬を塗るのであれば、それだけで1回あたり5分から10分程度の時間がかかってしまいます。
また、医療機関に通院する時間もロスになる可能性があります。
学校をお休みまたは早退していくとなると、その機会損失(学校で聞ける知識を聞けない)も有るでしょう。
3)飲み薬による眠気
アトピー性皮膚炎に対して飲み薬を処方されている方も多いかもしれません。
最も頻用される抗ヒスタミン薬ですが、副作用として眠気が有ります。
特に気をつけないといけないのは、インペアード・パフォーマンスと呼ばれるものです。
つまり、眠いわけではないけれど、脳みその一部が寝ているという状態です。
厄介なことに、気が付かないうちに効率が落ちていることが有るのです。
4)整容的な問題
これは面接の時に問題になるかもしれません。
特に顔面に強い湿疹が有り、そのために見た目で損をする可能性があります。
また、見た目によるバイアスが掛かる可能性も否定できません。
知識のある教育者ですからそのようなことは無いかと思いますが、
当落線上ギリギリにある時には問題になるかもしれません。
アトピー性皮膚炎が直接的に影響しているのはこのくらいでしょうか。
間接的な影響としてはどのようなものが有るでしょうか
5)性格の変化
一般的にアトピー性皮膚炎の人は性格が抑うつ的になる傾向が見られます。
そのために、本来得ることの出来る知識が得られない。また、人よりも強い不安のために
その知識が定着しない可能性があります。
また、特に小さい時に顕著に現れますが、引っ込み思案になっている場合は、
努力に対する正のフィードバックがかからない可能性があります。
つまり、他の子の前に出ない。褒められる機会が減る。褒められることを報奨とする努力志向が出てこない。
という可能性も考えられます。
さて、長々と考えてきましたが、これらはあくまでも仮説です。
当然人により大きな差があるでしょうし、
多くの人を対象とした調査もなされてはいないかと思います。
少なくとも私は聞いたことはありません。(調べてもそのような調査はありませんでした)
このお話はもう少し掘り下げてみたいと思います。
はい、うちではあえて言わないようにしています。
ということで今回はアトピー性皮膚炎のお話です。
多くの病気では治ったと言うのに、どうしてアトピー性皮膚炎で治ったという言い方はしないのか?
について簡単に解説します。
病気のガイドラインでも「寛解」という言葉を使っていますよね。
こちらの理由についても合わせて解説します。
寛解とは簡単に言うと、症状がなくなって日常生活に問題がなく過ごせるようになること
とでも言えばよいのでしょうか?
ではこの症状がなくなる=治癒ではないのか?
無いんです。
そもそもアトピー性皮膚炎の原因の一部には遺伝的な要因が関連していると考えられています。
アレルギーの体質しかり、皮膚の弱さの体質しかり。今後はもしかするとかゆみの体質が見つかるかもしれません。
ただこの体質は何かというと、遺伝子です。
生まれつきアレルギー反応が強い。生まれつき皮膚が弱いということを表現しているわけですね。
ですので、例えば湿疹がもしもなくなったとしても、このような体質が残っている限り、
できやすい皮膚はそのまま残されているわけです。
そして、何かの拍子に一気に症状が出てきてしまうわけなんですねえ。
実際にこのことは外来で診察をしているとときに見かけます。
湿疹がある日出たから受診したという患者さんの診察をしているとその湿疹がどうもアトピーっぽい。
そこで詳しくお話を聞いてみると小学生の時まで実際にアトピー性皮膚炎があった。
その後症状はなくなっていたので治ったと思っていた。
ということがよくあるお話だったりするのです。
つまり、アトピー性皮膚炎の湿疹の症状はなくなったとしても、
できやすい遺伝的な素因はそのまま変わらず残っているので、それがちょっとした刺激で
再度皮膚の表面に顔を出してきた
ということが起きたわけですね。
つまり、アトピー性皮膚炎の症状は確かに出たり引いたりするのですが、
その下、水面下での体質というのはずっとうねりとして残っており、何らかの拍子に
皮膚表面に現れる。
ということはあるんです。
ですので、そこをよく知っている皮膚科医は決してアトピー性皮膚炎が治癒したとは言いません。
寛解した。また「今回のこの症状は治った」という言い方はするのですがね。
本当にアトピー性皮膚炎というのは一筋縄ではいかないのですよねえ…
難しいです。
ここ数年で本当にいろいろな薬がアトピー性皮膚炎の治療に使われるようになりました。
副作用についても色々あるのですが、今まで常識と思われていた易感染性の副作用から
離れることのできる治療薬も出てきました。
今回は易感染性の副作用という観点から治療薬をまとめていきたいと思います。
>易感染性の副作用がある薬剤
・ステロイド(外用・内服・注射)
・シクロスポリン(内服)
・タクロリムス(外用)
・JAK阻害薬(外用・内服)
>易感染性の副作用のない薬剤
・デュピルマブ(注射)
・PDE4阻害薬(外用)
・抗アレルギー薬(内服)
となります。
以前はない薬剤が効果の弱い抗アレルギー剤内服以外にはない。
という状況でしたので、随分様変わりしたなあという印象を持っています。
選択肢が一気に増えましたので、上手に組み合わせながら治療を勧めていきたいですね。
2022年8月8日、アトピー性皮膚炎の治療選択肢がまた一つ増えることになりました。
それに伴い対応患者さんも増えることになります。
8月より使用開始になる薬剤は「ミチーガ」といいます。
この薬の一番の特徴はかゆみそのものを抑えること。
湿疹を抑えるのではないというのがポイントです。
またもう一つのメリットは対応患者さんの幅が広がったこと。
かゆみ止めを飲んでもステロイドなどの塗り薬を塗っても効果がないことという
条件付きですが、使用できる湿疹の範囲や強さが
EASI16から10まで緩和されています。
今まで症状は強くないのでダメと言われていた患者さんでも使用可能になったわけですね。
(EASIとは全身の湿疹の強さをいくつかの症状・部位別に分けてスコアを算出し、
全身の強さを表したものです。)
しかし問題も無いわけではなく・・・
かゆみを止める薬ですので、湿疹を直接止めるわけではありません。
今までの内服・注射薬に比べて治療効果は少し落ちるというデータがあります。
したがって現在内服・注射薬を使っている人に取ってはメリットはあまりないかもしれません。
また現状ではお家に持ち帰り、自分で注射ができないので通院を続ける必要があります。
(といっても月1回のペースですが)
ある程度の欠点は見られますが、完璧なおくすりなど存在しません。
少なくとも今まで使えなかった人に効果の高い薬が届くというその1点だけでも
有効な薬剤ではないかと考えています。
すでに当院では使用を決定しておりますし、治療開始を希望する患者さんもおられます。
当日すぐに注射を行うことは難しいですが、数日で薬剤は準備可能な状態になっています。
もしも治療を希望されてる方がおりましたら一度外来でご相談くださいね。
火曜日の午前中に療育センターで皮膚科の診療を行っています。
そこでも、アトピー性皮膚炎を始めとして湿疹の治療を行っていますが、
湿疹の治療の反応がものすごく別れます。
同じ治療をしているのに、一気に良くなること、全然ダメな子です。
違いはなにか?
見ているうちになんとなくわかってきました。それは
「引っ掻いているか」
たったその一点だけ。
湿疹というものは、自然に治ることだってあります。
ではなぜそうならないことがたくさんあるのか?
それは引っ掻いているから。
ということなのでしょう。
重症心身障害児にもさまざまな状態の子がいます。
重心などと省略していますが、その定義にはっきりしたものはありません。
一般に精神の発達が一般の人に比べて大きく劣ること。
体の運動能力も大きく劣ること。
の2点があるでしょう。
その中にも様々な状態の子がいます。
湿疹がよくなる子と良くならない子の違いはひっかくか否か。です。
良くならない子は引っ掻いている。
特に重心の子は自重することができません。
なので、下手をすると一日中引っ掻いていることがあります。
そのために通常の治療、つまり、一般の子ではこのくらいで大丈夫
というレベルの治療では全く良くならないことがあります。
逆に、全く動けない子の場合は何らかの理由で湿疹ができても、
通常の治療をするとあっという間に良くなってしまいます。
それこそ、一般の子よりも治りはすごく良いのです。
ということを考えると、湿疹が悪くなるのはどうしてもひっかくから。と考えたくなりますし、
実際にはそうだろうという印象が強くなってしまいます。
以上のことを考えると、湿疹の治療のコントロールはまず痒みをどのようにコントロールするか。
ということが一番大切な印象を受けてしまうのです。
もともと痒みは人生の質(QOLと言いますが)を落とすと言われていました。
そのために痒みに対する対処が必要だという考えです。
しかし、そのような消極的な対応ではなく、もっと積極的に痒みをコントロールすることが
湿疹の症状に対する治療になっていくのだろうと考えてしまうのです。
湿疹が落ち着かない時は多くの場合では痒みのコントロールがついていないようです。
まず痒みをどのように抑えていくのか?
その中でどのように問題を起こさずに痒みを沈めるのか?
どうもここが皮膚科医の腕の見せどころのようです。
すでにpain controlという概念は医療業界では一般的になってきました。
その次にはscratch controlという概念を広めていきたいものです。
以外に忘れがちなんですが。
と言うのも、現在のアトピーの研究がアレルギー的なもの主体になっているということもあるでしょう。
アトピー性皮膚炎についてはいろいろな研究があります。
あまりにもたくさんありすぎて、追いかけるのが難しい状態です。
というか、大まかな流れだけを見ながら追いかけているような状態です。
現在の研究の流れは大きく2つ。
アレルギーによるもの
皮膚のバリア異常によるのも
の2つでしょう。
そして一般的に有名なものが前者。
というのも、皮膚のバリア異常によるものということがはっきりしてきたのは
そんなに昔の話ではないから。
それに対してアレルギーの話はもっと昔からあったから。
また、マスコミ受けはアレルギーの話はいいから。
そんなところでしょうか。
でも、大事なことが一つあります。
あくまでもアトピー性皮膚炎で何が皮膚で起きているかというと、
湿疹の反応であるということです。
だから、湿疹を抑えないかぎりは今の症状は落ち着かないわけです。
バリアの問題やアレルギーの問題は本来はそれと同時かその後に来る話なのです。
その順番はあやふやになっているのが今のアトピーに対する問題かもしれません。
今の湿疹を放おっておいて、アレルギーだけに対処しても良くなりません。
皮膚のバリアの問題だけに注力しても良くありません。
あくまで、最初は湿疹を抑えることが大事なことになるわけです。
そのうえで、次にどうするのか?ということが大事になるわけです。
その順番。治療をすすめる上で大きな要素となります。
なぜ、この考えがあまり表に出ないのか?
・・・・やっぱり、湿疹の話だけでは地味だからでしょうねえ。
さて、昨年末よりアトピー性皮膚炎の適応が通りました内服薬に”オルミエント”があります。
今回はその準備が整いましたので、当院でも処方を開始しますよというお知らせです。
実はこの薬は以前より関節リウマチに使用されていたんですね。
免疫を抑えることにより炎症反応を抑え、結果として関節が落ち着くという。
当然内服ですので、全身にその効果は波及しますので、当然皮膚の炎症である
アトピー性皮膚炎についても効果があり、非常に高いものがあります。
ただ、問題点もありまして。
免疫を抑えてしまうので、感染症にかかりやすくなってしまうという問題もあります。
細菌、ウイルス、カビのそれぞれに弱くなってしまうんですね・・・
あ、新型コロナも理論上かかりやすくなってしまいます。
そのために使用開始前には内科さんを受診してレントゲンや血液検査により、
結核や肝炎などの感染症が隠れていないかを検査する必要があります。
そこだけひと手間かかってしまいますことをご了承いただいてという形になりますね。
あとはお金のお話です。
以前より使用しているデュピクセントですが、金額が非常に高いことにより
使用を躊躇される方が多くいらっしゃいました。
オルミエントも通常用量でしたら金額はほぼ同様になります。
しかし半分の用量もありますし、更にそれを一日おきに飲む方法もあります。
その分金額をもっと抑えることは可能かと考えられます。
まあ、その分効果は落ちてしまうでしょうけどね・・・
ただ、値段はそこまでかけずにある程度の効果を得たいと考える方には
非常に便利な方法ではないかと考えています。
また増量及び減量を柔軟に行うことも可能ですので、そういう意味でも
使用はかんたんにできるのかなと思います。
ちょっと前準備の必要な薬ではありますが、注射はちょっとねと思う方、
お財布に優しい効果的な治療法を検討されている方については
考えてみてもいいのかなあと思います。
今後当院で配布予定のプリントのリンクを貼っておきますので、
興味のある方は一読されてみてはいかがでしょうか?
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