わかばひふ科クリニック(東京都武蔵野市吉祥寺東町)

武蔵野市・杉並区・練馬区他の赤ちゃんから子供、大人、老人まで幅広く診察をする皮膚科クリニックです。アトピーやあざを始め、水虫、とひび、湿疹などの相談・治療を行なっています。

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ブログ

「食物アレルギー ホントのところ」

ひよこクラブ 2013年 06月号

恒例?最新号ひよこクラブの記事から気になるところをピックアップして見てみます。

 

今回のテーマは食物アレルギーです。

赤ちゃんを持っているお母さんはみんな心配なこの病気。

気持ちはよくわかります。

実は私(院長)も食物アレルギー持ちなのです。

メロンを食べると死んでしまう(のは言い過ぎ。でも、呼吸できなくなる可能性があります)ので、

結構切実な問題だったりします。

 

自らの経験でも、アレルギーが有ることが判明するまで時間がかかりました。

血液検査にもひっかからないものでしたし。

 

 

検査ですが、血液検査は嘘をつくことがあるのはご存知でしょうか?

 

まず、症状があっても血液検査で引っかからない場合。

血液検査でチェックするのは、その食材の中でもメジャーなものです。

数が少ない、マイナーなタンパク質が原因の時には引っかからない場合があります。

逆に検査が陽性でも症状がない場合。

この場合は抗体のゴミが引っかかっている場合があります。

特にアトピー性皮膚炎が重症の場合、血液検査をすると、全てに反応していることがあります。

この場合は逆に困ってしまいます。

 

本当は、血液検査である程度、見当をを付けたのちは、皮膚検査や負荷試験を行うべきなのです。

でも、問題はやってくれる医療機関が少ないんですよね。

医療者の立場で考えると、これらの検査は最悪ショックになる可能性があるので、

何があっても大丈夫という体制でないと試験を行うのは難しいのです。

紹介する方も気軽に紹介できないのが難しいところです。

結局は症状と治療への反応性をみて、という形になるのですが、

次はそのお話をしましょう。

「週刊ダイヤモンド2013/8/31 人気医療の罠」

週刊 ダイヤモンド 2013年 8/31号 [雑誌]

 

本屋さんでタイトルを見た瞬間につかみとり、レジに持って行きました。

 

乾燥は一言で言うと、

「よく言った!」

です。

 

医療保険の効かない治療法は正直、玉石混交です。

医療情報の非対称性(患者さんとお医者さんが持っている情報の量と質があまりにもちがう)が

この問題を難しくしています。

また、インターネットで更に混乱に拍車がかかりました。

 

一般に「効いた」体験談はたくさんあります。しかし、「効かなかった」体験談はそれよりも

目立ちません。だって、当たり前ですよね。嬉しくないですし。

また、インターネットでは華のない情報はあまり書かれることはありませんので、

実際の効果よりも、ネットの方が華々しく見えてしまうのです。

(インターネットの宣伝の問題もありますが、これはまた別の時に。)

また、反証がされていても、それが目立たなかったり、よくわからなかったりするので、

霞んでしまうわけですね。

 

今回の特集では、医療者側、医者側の事情に踏み込んで、

解説がなされています。

自費の治療はたくさんありますが、受ける前に一度熟読することをおすすめします。

 

この話については、いろいろと書きたいこともあるので、今後、詳しく話をしたいと思います。

 

 

最後にいま流行りのTPPについても一つ。

混合診療という言葉があります。

健康保険の効く治療と効かない治療を同じ病気に対して、同一日に、同じ医療機関で行うことが出来る方法です。

 

もしも、混合診療が許可されたらどうなるのか?

自費診療の中には質の悪いものもたくさんあります。

健康保険の代わりにそのような自費診療をすすめることになると、どうなるでしょう?

患者さんは高いお金を支払い、(相対的に)効果のない治療法を行うことになるかもしれません。

儲かるのは、(その効果のない治療法を進めた)医師と関連会社のみということになりませんか?

・・・このようなことを考えると、単純に混合診療に賛成することが出来ないのです。

「脳には妙なクセがある」

脳には妙なクセがある

 

著者は現役の薬剤師さんです。

もっとも研究を中心に行なっている方ですが。

この本は脳の研究について、最新の知見をわかりやすく噛み砕いて教えてくれるものです。

巻末の参考文献の多さといったら…

 

人間は、進化の果てに出現しました。

同様に人間の脳も進化の結果生まれたものです。

そのため、その他の動物と非常に似通った反応をすることもあります。

逆に、「自分で考えて行った」ものも実は自動的な脳内の反応を反映したに過ぎないこともあるのです。

 

この本では脳が本来持っている偏り「バイアス」について詳しく説明しています。

つまり、人間という存在が元から持っている偏りについて明快に解説されているわけです。

この事実を受け入れるのは結構不愉快なものですが、事実を事実として受け入れた上で、

どのように生きていくのかを考えてみてもいいのかもしれません。

 

追記1

これらの現象の大くは、まだ理由や機序の不明なものも多く含まれています。

あくまでも「その傾向がある」ということしか示されていません。

「方向性」のみであり、「明確な事実」と言いにくい部分があることも確かです。

そこだけは、忘れないようにしないといけませんね。

「疾病と世界史」

疫病と世界史 上 (中公文庫 マ 10-1)

 

「疾病と世界史」

著:ウィリアム・H・マクニール

 

高校時代、世界史は私には合いませんでした。

その当時はなんとなくだったのですが、

最近になってその理由がおぼろげながらわかってきました。

つまり、歴史というものは、地理、気象その他の分野のバックグラウンドがわかって初めて理解できるのです。

当然、言語や風習、文化もわからない状態では単語の羅列になってしまいます。

日本史であれば、地理や気象条件は大きく変化することがないと直感的にわかるのですが、世界史ではそうも行かないですよね。

(でも、気象については気象歴史学という、真面目な学問になっています。地理についても条件が変わっていますので、逆に注意が必要ですが)

 

いままで世界史では政治、経済の話を中心に語られることが多い状態でした。

しかし、最近は気象条件も合わさり議論になっているようです。

例えば、飢饉と火山の噴火や太陽光の強さ、寒冷化などは有名でしょうか。

 

この本はさらに「病原微生物」による伝染病という軸を中心に世界史を語っています。

つまり、歴史にたびたび出てくる伝染病がいかにその当時の社会に影響を与えたのか。

という話が中心となります。

 

読んでみて、ひとつ言えること。

それは社会の動乱が伝染病を呼び、伝染病が社会の動乱を呼んできた

という話です。

 

古代ローマ帝国を始めとして幾つもの強大な国家が伝染病のために滅んだ

という非常に興味深い仮説が示されています。

医学に携わる人間として、非常に感銘を受けた一冊でした。

 

日本ではどうだったのでしょうか。今度時間がある時に調べてみましょうかねえ。

「男の子・女の子のおしり・性器のお手入れ鉄板ガイド」

ひよこクラブ 2013年 05月号

 

さて、ひよこクラブ2013年5月号の特集のもう一つは

オマタのお手入れ方法でした。

 

外来でもよく聞かれることがあるのですが、ここに乗っているケアのしかたは

すべてを網羅しています。

この部分のために1冊購入してもいいと思います。

 

特に男の子がいるお母さん、女の子のお風呂に入れないといけないお父さん。

必見です。

 

唯一気になるのは、トラブルになった子のケアの仕方が書いていないこと。

まあ、トラブルになる確率はそう高いものではないのでいいのかもしれませんが、

簡単に触れていても良かったかなと思います。

 

皮膚科医がおすすめするケアはシャワーで洗うこと。

どのおしりふきを使うかも大事かもしれませんが、そもそもなぜオマタのケアをする必用があるのかを

しっかりと考えなければ行けませよね。

オマタのトラブルがもしも心配でしたら一度来院してください。

詳しくお話させて頂きますね。

「王子様のくすり図鑑」 著:木村美紀 監修:石川洋一

うーん。どこかで見たことのある、絵柄だなあ。

と思ったのが第一印象でした。

ああ、ファイナルファンタジーとかで見ましたねえ。

ということで、幾つかのシリーズがありますが

その中でも絵柄が一番好みだったりします。

 

小学校低学年から高学年くらいが対象でしょうか。

薬の説明というよりもどのような効き方をしているのかの説明になっています。

 

でも、無味乾燥な説明書よりはこっちの方が読んでいて楽しいですよね。

 

ということで待合室に置いてありますので、

興味の有る方は手に取って眺めてみてはいかがでしょうか?

 

「有機化学美術館へようこそ」

有機化学美術館へようこそ ‾分子の世界の造形とドラマ (知りたい!サイエンス)

 

この本を高校生の時に読んでいれば人生は変わっていたと思います。

多分化学の道に進んでいたかもしれません。

化学はもともと結構好きでした。

こんなに奥が深く、楽しいということを知っていたらいまここでこうしてブログは書いていなかったかもしれません。

それほどまでに楽しませてくれる書籍です。

 

以前より筆者のブログはたまに覗いていました。

最近光合成について勉強している時にたまたまリンクを見つけ、

読んでいたらつい引きこまれてしまいました。

 

いや、こんな分子が世の中に存在するなんて思ったことありませんもの。

nanoputian

 

 

Nanocar2

 

「面白ければいい」というと叱られるかもしれません。

毎日の生活に役に立つのが大事という考え方もあります。

しかし、今は大事では無いように思えることでもいずれ花がさくこともあります。

カーボンナノチューブ、フラーレンなどがいい例ですね。

 

それだけではなく、こんなに面白いものがあるんだよ。

ということを子どもたちが学ぶことも大事だと思います。

子どもはびっくりするくらい好奇心が高く、

脇目もふらずにのめり込んでいきます。

その最初の取っ掛かりとしてこのような本は大事ではないでしょうか。

646px-Types_of_Carbon_Nanotubes

Fullerene-C60

 

この本は難しい化学式はあまり見られません。

CGでカラフルで不思議な図がたくさん載っています。

小学生から中学生くらいでも十分に読むことが可能です。形を眺めるだけでも面白いです。

また、化学をある程度勉強した方であればなおさら。大人が読んでも楽しめます。

たまには自分の専門分野と全く違う本を読んでみてもいいのではないでしょうか。

 

お勧めです。

 

「挫けない力 逆境に負けないセルフマネジメント術。」

挫けない力 逆境に負けないセルフマネジメント術。

 

挫けない力 逆境に負けないセルフマネジメント術。

石田淳、白戸太朗 共著

 

エビデンスレベル:ケースレーポート

 

読み始めてから少しずつ違和感が出てきた本でした。

タイトルのみ見て読み始めましたが、「あれ、なんか違う」感が徐々にして来ました。

つまり、「挫ける」とは何か、答えは無いんですよね。

「挫ける」とは一体どういう状態なのかの定義がない。

そこで最初に引っかかってしまい、気になったままでした。

また、挫けないための方法論についても

「挫けそうな時にどうすればよいのか?」については触れておらず、

「挫けにくい体、心の作り方」のみに重点をおいた文章が綴られていました。

 

続けかた、継続の仕方、心の持ちようなどについてはためになることも書いてあります。

ちょっとした工夫など、ランニング3日坊主の人間としては試してみたいこが色々とありました。

ならば、副題に逆境に負けないためのランニング術などと書いてくれれば、

よりわかりやすくなったと思うのですが……

 

どうすれば挫けそうな時に踏みとどまれるのか

など知りたい方は他の本の方が良いかと思います。

「指先採血」やってます

今年の春から始めた検査法ですが、

通常の採血とは異なるアレルギー検査方法が出てきたので、

今回はそのご紹介をしていきましょう。

 

うちでは「指先採血」などと読んでいますが、

正式な名称は・・・なんだろう。

 

こちら、指先で血を数滴取ればある程度のアレルギー検査が即日できるという

スグレモノの検査なのです。

 

一般的な採血では小さな子どもの場合、ルート確保に大騒ぎになります。

そして大量の検査を行うには良い方法なのですが、

ある程度単純化した検査を行うには必要以上に採血する結果となります。

また恐怖心も採血より指先からの方が少なくて済むでしょう。

トラウマのリスクも減りますし。。。

 

結果が出るまでの時間が短いこともメリットとなります。

20分で結果が出ますので、待たせる必要がなく、ありがたいです。

 

しかし欠点もあります。

まずはきちんとした数字で出ないこと。

あるか、ないか、強いか、

くらいしかわかりません。

次に検査項目が限られること。

現状8品目のみの検査となっています。

 

花粉系として

スギ(ヒノキ含む)

カモガヤ

ブタクサ

ヨモギ

の4種類。

 

ハウスダスト系として

ヤケヒョウヒダニ

ネコ

イヌ

ゴキブリ

の4種類

 

合計8種類しか検査できません。

 

しかし小さな子が花粉症がないか?

ダニアレルギーがないか?

検討するには十分ではないでしょうか。

現在は舌下免疫療法という対処法もあるのですから。

 

ということで新しいアレルギー検査についてのご紹介でした。

「小」やけどの治し方

 

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さて、今回は小さなやけどの治し方についてお話をしたいと思います。

「小さな」「大きな」というのはやけどに関してはあくまでも便宜上の区別です。

しかし、体表面積の10%を超えると、場合によっては入院が必要となることもありますので、

治療の方向性が大きく変わることもあります。

今回は、クリニックに通院して治療することができる、それ以下の面積のやけどの話をしたいと思います。

 

さて、やけどとは一体何でしょうか。

体の中ではなにが起きているのでしょうか。

 

やけどは人体に熱を加えると発生します。

温度は50度以上なら起きると言われています。子どもはもっと小さい温度でも起きることがあります。

やけどの正体は熱により皮膚のタンパク質が壊されること。

それにより、皮膚の機能が果たせなくなることが問題なのです。

よく、やけどのあと、水ぶくれになることがありますが、これはあくまでも表面に見える症状です。

その周囲には役目を果たすことの出来ない皮膚が広がっている可能性があります。

また、その影響は時間が立ってから初めて見えることもあるので、油断できません。

一般に数日経過して初めて皮膚の影響がはっきりわかるのです。

(低温熱傷は例外。もっと外まで影響が広がっていることがあります)

 

皮膚に影響した熱の強さにより、皮膚の変化は様々に変わっていきます。

弱い時にはただ赤くなる。そして、ヒリヒリします。

更に強くなった時には水ぶくれになり、

更に強い時にはその部分が焼けたり、こげたりして死んでしまいます。

痛みはあったりなかったり。

でも、実は痛みが無い方が症状は悪いのです。

なぜなら痛みを感じる神経が死んでしまうために痛みすら感じなくなるのです。

なので、痛みが無いときには要注意です。

 

治療ですが、また症状によって変わります。

皮膚が赤くなった時には細胞はまだ生き残っているので、

炎症をステロイドで抑えることで落ち着くこともあります。

 

逆に皮膚の表面が死んでしまった場合はその死んだ皮膚を剥がして、

新しい皮膚を生やして上げる必要があります。

必要があれば皮膚を移植する手術も行うかもしれません。

 

一番、治療の選択にバリエーションが有るのは水ぶくれが見られるときです。

水ぶくれを剥がすべきか残すべきか。

薬を使うか、シートで覆うか。

これは人によりかなり方針が異なります。

当院では破れていない水ぶくれはそのままにし、

上からシートで覆うような治療法を行っています。

これは、水ぶくれの中にはバイキンがいないということ。

中の水には傷を早く治す成分が沢山入っていること。

という事実を基に選択する治療法です。

もちろん、薬が早いと思えば薬を使うこともありますが、大部分は

シートを使います。

あと、シートの利点はもう一つ。

痛みやひりひり感はシートを使ったほうが痛くないのです。

 

なので、当院では8割以上の患者さんにシートを使っています。

軟膏とシートの併用も含めるとほとんどすべての患者さんにシートを使った治療を行っています。

(なお、このシートを使った治療は閉鎖療法や密封療法,湿潤療法と呼ばれています。)